募金箱に入っていた小切手の金額を見て、その場にいた人々は目を疑った。書かれていた金額はなんと50万ドル。送り主はかつて食料品店で廃棄された食料を食べ、その日の生活をしのいでいた夫婦だった。今では人を助けられるようになり、彼らなりの社会への恩返しだった。
 サンクスギビングデー(感謝祭)の翌日、全米では「ブラックフライデー」と呼ばれるセールが一斉に行われる。半額セールも当たり前。感謝祭のごちそうも食べず、家電量販店に徹夜で並ばされるお父さんの姿も少なくない。翌週月曜日にはオンラインショップの一大セール「サイバーマンデー」が待っている。この時季は消費者の購買意欲が最高潮に達し、財布のひもが緩む。
 人々が買い物熱で躍起になった後、訪れるのが「ギビングチューズデー(GivingTuesday)」だ。聞き慣れない人も多いかも知れないが、サイバーマンデーの翌日に設けられ、「与える火曜日」の意味を持つこの日は、さんざん買い物をして物欲を満たした後、今度は与えることに重きを置く慈善活動の日となっている。
 2012年に始まった比較的新しい風習のひとつで、世界各国の慈善団体やNPO、企業などが寄付を呼び掛ける。
 今年は1億1670万ドルが集まり、前年比で155%増加した。寄付した人は総勢69万8961人。今では米国だけでなく、世界71カ国、3万団体以上が参加する国際的な取り組みになっている。フェイスブックやツイッターなどのSNSも駆使し、関連の投稿件数は130万件にのぼる。
 前述の夫婦はミネソタ州郊外の食料品店前で、慈善団体「サルベーション・アーミー」が実施していた募金運動に寄付をした。50万ドルという大金は、同団体が1度に受け取った寄付として過去最高額だった。
 2人は若かりし頃、お金がなく、日々の生活に困窮し、店で余った食料をもらい生活していた。夫婦は匿名を望み、どこの誰だかはわからない。しかし、このニュースはギビングチューズデーのその日に、夫婦からの希望を込めたホリデーの温かい贈り物として全米中に届けられた。【吉田純子】

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