1億4千万ドル。パワーボールの賞金が途轍もない金額に膨れ上がった。
賞金額史上最高などと報道されるとロットの売り上げに拍車がかかり、数千万枚に1枚という確率もさして気にならない。いやそのたった1枚の当りくじが自分に当らないとは誰が言えようか。
当り番号が発表されるまでは、2ドルで1枚買った人も、100ドルで50組の組み合わせを買った人も、等しく人生バラ色である。
賞金額がここまで上がるまでに、一体何組の番号が組み合わされたのだろう。それが一組もマッチしないというのも不思議ではある。
もし賞金が当ったら…。
「リタイアして家族で世界旅行」
「まずクレジットカードの借金を払って、新車を買って家を買って、それでも残るから…」
「使い道が分からないから困る」などと、当る前から困っている人もいる。庶民の夢を叶えるには大きすぎる金額なのだ。
しかし過去にロットで一躍百万長者になった人が、大金の管理ができず、兄弟、親族、友人に集(たか)られ、麻薬におぼれて借金まみれという不幸な話もまれではない。
老朽化した職場の建物のコンディションが悪く、雨漏りはする、外壁はタックポインティングをしないと隙間がひどくなっている、集会場の照明はいつも蛍光灯の四分の一が切れていて薄暗い…。常に最も悪いところに応急処置を施すことで凌いでいる。
それでも「いいですね、こんなスペースがあって。会場の心配をせずに、いろいろな催しができて…」などとうらやましがられることもしばしばあり、ものは考えよう、感謝しなければ、などといいながら、予算のないことを嘆いている。
誰からともなく、「みんなで出し合ってパワーボールを買って、当ったらコミュニティーセンターを建て直して、残りは山分けっていうのはどう?」という話が出ている。
健気だと思いませんか。
しかしみんなが金持ちになって一緒にリタイアしたら…、どうなるのだろう。
このコラムが紙上に出るころ、ひょっとしたら上司に引退届けを出しているかも。
いや、初夢、初夢、
今年もどうぞよろしくお願いいたします。【川口加代子】