20年前に始まった会議は今回で5回目で、主催する「APIDC」(Asian and Pacific Islanders with Disabilities of California、パトリシア・キナガ会長)は、アジア・環太平洋諸島系の障害者支援を専門に扱う非営利組織。キナガ会長によると、その活動は3者—①障害者である当事者とその両親②州に代表される公的サービスの提供者③地域社会活動団体(日系ではリトル東京サービスセンターなど)をつなぎ、障害者の声を集めて他に届け、生活の向上に役立てることを目的とする。
会議には、身体、知的、精神のそれぞれで障害を持つ人々が参加した。車椅子に乗った人や、白い杖をついたり盲導犬を連れた視覚障害者、聴覚障害者には手話がつけられた。障害の種類はさまざまで、またその重さも個人によって異なる。キナガ会長は「こうしたさまざまな障害者が一堂に会するのがこの2日間の会議。障害者と家族、各専門家が参加し『ワンストップ・ショッピング』のように多くの重要な情報を得ることができるのが特徴」と説明する。
講師は90人に上り、州、郡、市の担当者や、大学教授、各学校区の教育委員、弁護士、セラピストなど各分野の専門家が分科会で登壇。公民権や進学サポート、ヘルスケアなど、さまざまなテーマを基に話した。聴衆も意見を述べ、ある教育者は「障害者に接する上で知らないことが多く、セミナーに参加し、とても勉強になりありがたい」と語り、他のセミナーでも同様に謝意を述べる参加者が見られた。会場には32ブースが並び、各種サービスを提供する非営利団体や、ヘルスケア、補助用具などを扱う民間の企業が参加した。
障害者の子どもを持ち、日本語を話す親たちで構成する「手をつなぐ親の会(JASPACC)」は、ブースを出して活動の周知を図るとともに、メンバーはさまざまなセミナーに参加し知識を深めた。親たちは、子どもたちのための各種サービスやベネフィットを理解し活用しようと、メモをとったりスライドのスクリーンを写真に撮るなど懸命だった。
キナガ会長によると、1998年の団体設立当時は、アジア系の障害者を擁護する団体が必要だったという。「障害者の職業訓練などを行う団体とは異なり、障害者を法的に保護し、権利を主張するわれわれの役割は今も変らない。アジア・太平洋諸島系の障害者に特化した専門的なプログラムを持つ、われわれのような団体はカリフォルニア州にはここだけで、全米でも他に類はないだろう」と強調。同会議については「社会が開催の必要性を感じて、多くのパートナーが参加し協力を得られてうれしい。今は2、3年に1度の開催だが、もっと頻繁に行うことができればいい」と希望する。今後の活動については「一般の人々にアジア系の障害者について理解を求めるとともに、障害者を支援する各界での次世代のリーダーの育成にも力を入れたい」と抱負を述べた。【永田潤、写真も】