これまで時々活字で目にすることのあった、日本の「ふるさと納税」。思いがけなくも今回、熊本地震でその制度に接することになった。
 熊本地震で地すべりや阿蘇大橋の崩落など南阿蘇村の立野地区に大きな被害が出たとの報道に、真っ先に浮かんだのは友人の実家のこと。学生時代、阿蘇・立野の実家を訪れ、池に泳がせていた魚のご馳走にあずかり、翌日は友人と阿蘇の温泉巡りをした思い出が蘇った。福岡在住の友人に見舞いの電話を入れると、ご両親は他界してお兄さん一家が住んでおられたこと、家はかなりの被害を受けてこのままでは住めないことなどを語った。
 復興支援の寄付として心づもりにしていた金額を、立野のご実家または立野地区へのお見舞いとして直接届けたいとのメールを送ると、彼女から提案されたのがふるさと納税。
 「南阿蘇村にふるさと納税をして下さると良いと思います」「立野地区は、地区ごと危険地域に指定されて元に戻れない状態が続いていて、将来のめども立たない状況です。どこかに南阿蘇村の村営住宅でも作って移転しないといけない状態になるかと思います」とあり、ふるさと納税ポータルサイトが記してあった。
 2008年に制定された「ふるさと納税」は、「今は都会に住んで(その自治体に納税して)いても、自分を育んでくれたふるさとに、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのでは」との考えを元に始まったのだという。結果は、故郷か否かにかかわらず自分の選ぶ地方自治体に寄付をする制度となり、寄付した金額は一定限度で地方税や所得税から控除されることとなった。また、自治体の多くが特産品などの「お返し」を送ることでも知られている。
 「ふるさと納税といえばお返し目当てが多くて嫌な感じがしていましたが、この緊急支援募金はお返し不要で申し込めば良いです」と友人。早速私も、ふるさと納税サイトでクレジットカードを利用して支援金を送ることが出来た。ただそれ以降、ふるさと納税を誘う「お返し品」リストがコンピュータ画面に頻繁に現れるようになったのは少々目障りだが。【楠瀬明子】

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