以前、この欄で紹介した脳科学者の中野信子氏が大変興味ある話題について解説されていた。それはいわゆる愛情ホルモンといわれる「オキシトシン」についての話だ。
 このホルモンは脳から分泌され「信頼する気持ちを強める」とされているものなのだそうだ。性や妊娠、出産、授乳にもかかわっており、親が子供をなでてあげたり、恋人同士のスキンシップなどの触れ合いによりこのオキシトシンは分泌され、人を信頼し幸せな気分にさせるのだそうだ。また、自閉症、認知症などの研究にも応用が見込まれて研究されているという。
 普段、私たちは人の幸せとは身分や財産によるところが多いと思いがちだが、現実の世の中は必ずしも地位が高く、おカネ持ちの人が幸せだとは限らない。オキシトシンの分泌による結果が最後の決め手、ということなのかもしれない。
 このホルモンは人がストレスを感じたりすると、その対抗策として脳から分泌され、ストレスから生ずるマイナスの気分をプラスの効果で打ち消してくれるホルモンともいわれ、別名を愛情ホルモン、抱擁ホルモン、信頼ホルモン、絆ホルモン、思いやりホルモン、癒しホルモン、抱きしめホルモン、などとも呼ばれているようだ。
 人は基本的にホルモンによって感情が左右されやすく、オキシトシン以外にも、コルチゾール、アドレナリン、テストステロン、PEA(フェニルエチルアミン)、ドーパミンなどによって感情が動かされ、怒ったり、恋愛したり、感情が盛り上がったりするのだそうで、私たちの喜怒哀楽が分泌されるホルモンの作用次第とは興味深い。
 中野先生の言葉によると、男女の間で日常手軽にできるオキシトシンの分泌量を多くする秘訣(方法)は次の三つだという。(1)互いの目を見つめあう(2)スキンシップをはかる(3)相手の名前は下の名(姓でなく名のほう)で呼ぶ。
 要は相手のことを大切に思って、感動する毎日を送ること、これが幸せを得る最大の方法ということのようだ。これが私のような日本生まれの、特にシニアにとって苦手なので意識して努力しなければ。
【河合将介】

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