正月になまはげを見て感じるものがあった。見たと言っても秋田の男鹿で大晦日に行われるなまはげ行事を日本のTVニュースで正月気分でのんびり見ていただけだが。
 なまはげは男鹿のものが有名だが、実際は東北の日本海側を中心に青森から沖縄まで日本各地に伝わる伝統的風習の行事のようだ。恐ろしい形相の赤鬼、青鬼の面をかぶった若者が腰みのを付け、大きな出刃包丁や鍬(くわ)、棒を振りかざし、ウオーとくり返し大声を上げながら雪を踏んで家々を回り、上がり込む。
 家の中で神棚を拝んだりしつつ、荒々しく足を踏み鳴らすお馴染みの光景。これは本来的には神様が年の変わり目に降りて来て悪い者や怠け者を懲らしめ、善良な人間を祝福する意味があったらしい。家の主人は羽織袴で迎え入れてもてなす。おどろおどろしげな神様にしては主人と座ったりしておせち料理や餅や酒、銭も貰ったりして引き上げる。
 毎年報道の見せ場? になる場面は鬼たちが泣く子はいないかー、親の言う事を聞かぬ悪い子はいないかー、怠け者の子はいないかー、と大声で子供たちを脅し震え上がらせる。子供たち特に幼児は親の腕の中でおびえ逃げまどい泣きじゃくる。子供に恐怖観念を植え付けて将来の躾に使おうという昔の考えだ。
 だが今年見たTVでは、鬼がどの家に行ってもほとんど子供がいない。大抵は老夫婦が二人出て来るだけ。寂しさ漂う座敷の光景だ。鬼たちも本来は若者たちのやる役割だが、いい年のおじさんたちが頑張ってやっていてご苦労さまで哀感漂う。老夫婦と鬼さんが四角に座り合って、風邪ひいてねーか、来年も元気でなー、と優しく励まし合っている。
 地方の温かい人々の姿が胸に沁みるが、日本国として寂しい光景だ。地方から若者や子供が減っている少子高齢化の厳しい現実の姿。国の将来に深刻な懸念を浮かび上がらせる断面。
 いつから何故こうなってしまったのか。社会学的に答えはとっくに出ている。政治が特に地方より国が有効な対策を予算化して実行出来ないだけである。この立て直しは今日の経済や国防よりも国の長期根幹にかかわる急務だろう。【半田俊夫】

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