2016年の「新語・流行語大賞」のトップテンに「日本死ね」が選ばれた。保育園の抽選に外れた母親がブログに書き込んだ言葉がマスコミや国会でも取り上げられ、一躍流行語になったのだ。
 過激な発言をした母親の言い分はこうだ。
 〈育児施設や保育士の不足から子供を保育園に入れたくても入れてもらえない。政府による行政サービスって、どうなってるの。国民のニーズに応えてくれないじゃない。そんな「日本など死んでしまえ」よ〉
 米国では、政府や議会といった「既存支配層」に反発し、現状打破を求めた一般大衆の憤りが「トランプ現象」を生んだ。その結果、政治経験ゼロの億万長者があれよ、あれよという間に大統領になってしまった。
 日本の一般大衆も日本を牛耳っている「既存支配層」にひと泡吹かせてもよさそうなものだが、それだけのエネルギーは当面出てきそうにない。「日本死ね」が流行語になって乾いた笑いを誘っているだけだ。
 「新語」といえば、最近よく目にする「Post-truth」という言葉がある。こちらは、「オックスフォード英語辞典」の「ワード・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。
 「世論形成には、個人的信念をエモーショナルに訴えるほうが客観的な事実よりも影響力を持っている状況」を表すワード(言葉)だ。
 例えば、「バラク・オバマはアメリカ人ではない」「不法移民は皆犯罪者だ」だといったウソがまことしやかに信じられている社会現象だ。
 「既成のメディアは俺の発言の真意を伝えない。だから俺はツィッターで直接発信する」
 そう公言してきたトランプ氏。だが、そのツィッターの内容のかなりの部分は事実に反すると指摘されている。
 3日後、米国史上初の「ツィッター大統領」の行列がワシントンの目抜き通りを練り歩く。【高濱 賛】

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