3年後に迫った五輪・パラリンピック。ホストの大役を務める東京が、大会に影響を与えかねない事態に陥っている。老朽化した築地市場が豊洲への移転を延期し、揺れに揺れているのだ。問題が次から次へと明るみに出て、土壌調査では、やはり有害物質が検出された。初めて耳にしたベンゼンは、なんと環境基準の79倍というから危険極まりない。
 移転延期に伴う新施設の維持・管理費や業者への補償は、すでに数十億円に上るという。一国のGDPにも相当する、お金持ちの東京といえども、これだけの額を税金で補うとなると、都民は怒らざるを得ない。延期を決断した現知事は、真相究明のため、移転先の用地を取得した当時の知事の責任を問い、現、元知事の醜い争いに発展しそうだ。
 一連の問題が各局のワイドショーなどでも、おもしろおかしく取り上げられ、みっともない。真実ではないことも報道されているそうで、しびれを切らした、問題のキーパーソンとされる元知事の側近で、用地取得の担当にあたった元副知事が先日、民放のテレビ番組に出演し、交渉の過程を明かした。
 早速、それを動画投稿サイトで確認してみると、驚きの連続。元副知事によると、元知事は市場の移転に関心が薄く一切、交渉にかかわってなかったという。これを聞いて、元知事が質問状に答えた「記憶にない」や「分からない」が納得できた。さらに、交渉は難航したためだろうが、「水面下」で行われたことを強調し、利権がかかわる政治交渉の難しさをあらためて知った。これら元2人は、参考人招致に応じるといい、これまた注目されるが、「犯人探し」をしたところで問題解決になるのかと疑問に思う。
 歴史的な築地が、なくなる前にもう一目見よう、と私が訪れたのが2年前。年の瀬で、迎春準備を整えるため食材を求める人、そして外国人観光客で、ごった返していた。見納めだったのだが…。東京は、世界に広まりつつある、すしの発祥地。江戸前をさばく台所の大問題を早急に解決し、訪日してもらう外国の方々にも安心して食べてもらわなければならない。【永田 潤】

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