1999年頃に発想した作品「ピクセルディア」は、鹿のはく製がモチーフ。大小幾多のクリスタルガラスの球体でモチーフを覆う「ビーズ」という独自の技法を駆使し「ガラスのレンズを通して作品を鑑賞する。視点が変わると、レンズの中の像も移り変わるので、ディスプレイを眺めている感覚にもなる」と説いた。この頃は、この作品づくりで用いたデジタルカメラやインターネットが普及し始めたといい「急速に進むデジタル化の過渡期に、その情報化の衝撃を彫刻に生かそうとした。人間の感性と、テクノロジーが同時にアップデートするムードを感じた」などと、創意を凝らした。
庭の中心に彫刻を配した作品は「混とんとした宇宙の中で、中心に強い光が当り、そこからビッグバンのように変化し、両側から新しい命が生まれる」という独特の発想でストーリーを描き、その空間をCGを使って幻想的な世界へと導いた。別の作品で、船をモチーフにした禅宗の寺の庭園に建てた巨大な木造オブジェクトは「(上部が)日本伝統の寺の屋根と、(下部は)船をイメージし、コンバインした」といい、インスタレーションを体感できるという。
コンテンポラリーダンスをも作品にしてしまう。全裸に近い7人のダンサーが演技する「ベッセル」は「顔と頭を見せずに、互いに組み合うヘッドレスの影像」。ダンサーは「男女、国籍の見分けがつかず、それを彫刻的に見せた」と説明。そのダンスの一つのポーズ「スパイダー」を3Dでスキャンして仕上げた彫刻を発表している。
気鋭のアーティストは、自身の作風について「スカルプチャーを主に、建築そして、デザインへと領域を広げている。彫刻家なので、絵を描いても、影像を作っても、彫刻的なデザインを大事にしている」と語る。デジタル画像をアートに取り入れているのは「今の時代を考えると、踏み込んでいかないといけない」と強調し、これからも従来の技法と最新のデジタルアートをミックスさせ「何かおもしろいものができないかと考えている」。自身の4作品がブロード美術館で展示されたことについて「とても光栄で、いつかぜひ、ここで展覧会もやりたい」と、抱負を述べた。
ジャパン・ハウス内のスペースのデザインについては「独自性を出さずまた、デザインを前面に押し出すことはせず、シンプルにまとめようと思っている」と明かした。「日本の伝統工芸から(自身の専門でもある)コンテンポラリーアートまでを幅広く、ニュートラルに見せられる空間にしたい」と考えを示し、来館者に対しては「あまり先入観を持たずに来て、今の日本をストレートに感じてもらいたい」と願った。
ジャパン・ハウスは、文化(伝統、芸術、食、ポップカルチャー)や観光、科学技術など、幅広い分野において日本の魅力を発信する拠点とする。開館までに、今回と同様のプレイベントをテーマを変えて開く予定。【永田潤、写真も】