日本語で育った子供は、小学3年生ぐらいまでは英語の単語力や表現力がやや弱いが、それ以降はクラスでも上位の成績を上げる子が多いと教育現場の先生は言う。
そもそも言葉は、その環境に応じて自ずと身についてくるのが普通だ。しかし、大人になってから外国語を覚えるには、本人の努力が必要になる。けれど、英語ができるからといって特に偉いということはないし、50年もアメリカに住んでいても、英語は日常会話程度という人だって多い。
今月6日、NYヤンキースの田中将大投手が打ち込まれた際、投手コーチが通訳を伴ってマウンドに行き、二言三言。このシーンに対してテレビ局の解説者ジェリー・レミー氏が「田中は英語を覚えろ」と発言したことが「人種差別的」だとして物議をかもし、レミー氏は謝罪に追い込まれた。
4人に1人(26・5%)が外国出身選手で占められている大リーグ。英語以外のコトバが日常的に使われているのは一般社会と同じだ。通訳のマウンド帯同は2013年から認められているのだから、田中投手の英語力を非難するのは試合の本筋から外れている。
普通、アメリカ人が外国人をイジメる時に発する決まり文句がこの「Speak English !」。社会に迷惑をかけず、納税義務も果たして暮らしているなら、何語を話そうとも本人の自由。ましてや、一流プロとして活躍している選手に通訳を必要としない完璧な英語力を求めるのは酷というもの。
通訳のベンチ入りが認められていなかった1995年、大リーグに挑戦した野茂英雄投手は「野球をやりにきたのであり、英語を勉強しにきたのではない」と明解。現在、シカゴ・カブスで活躍する上原浩治投手も、キャッチャーがマウンドに駆け寄ってきても「ただ右から左に聞き流すだけ。頷いても、ほとんど分かっていない。はよ戻ってくれって感じ」と告白している。
数年もすればひとりでに英語が上達する子どもたちとは違って、プロ選手は好成績を残してナンボの世界。ジェスチャーと片言英語で愛嬌を振りまいた川崎宗則選手のようなキャラクターは稀(まれ)なのだから、余計な神経を使わずに「本業」をより磨いて、ファンを唸らせてほしい。
【石原 嵩】