
コミュニティーの夢
実現に向けて前進
リトル東京サービスセンター(LTSC)は3日、小東京に建設予定の多目的スポーツ複合施設「ポール・I・テラサキ武道館」の起工式を行った。式典には同事業の支援者やコミュニティーの代表者らが出席。コミュニティーの長年の夢の実現に向けて大きく前進した。【吉田純子、写真も】
LTSCのナカトミ理事長(左)と「テラサキ財団」から350万ドルを寄付したキース・テラサキ氏。工事の安全を祈願しだるまに右目を入れた
武道館は若者や高齢者、家族がスポーツやコミュニティーイベントが楽しめ、小東京と日系人の文化をつなぐスポーツ施設を作ることを目的に、LTSCが1994年に建設計画を開始した。
総工費はおよそ2500万ドル。LTSCは政府からの助成金や支援者からの寄付でこれまでに2430万ドルを集めた。今後も継続して建設費目標を達成するまで寄付を募る予定。
総面積3万8千平方フィートの広さに、バスケットボール、バレーボールが行えるコート2面のほか、マーシャルアーツ・トーナメント・スペース、庭園、こどもの遊び場、コミュニティーの憩いの場としても活用できるアウトドア・プラザ、地下駐車場も併設される。
同計画をめぐっては今年はじめ、臓器移植の権威で慈善家としても知られる故ポール・イチロー・テラサキ博士が設立した「テラサキ財団」から350万ドルの寄付を受けた。財団への感謝とテラサキ博士を記念し、武道館は同博士の名前を冠して「ポール・I・テラサキ武道館」と命名された。
さらにアラタニ財団、スギモト財団、アイコ・カワラタニ氏など多くのコミュニティーメンバーからも寄付が寄せられ、コートや庭園には支援者の名前が付けられる予定となっている。
LTSCのディーン・マツバヤシ所長
設計を担当したのは建築家の高瀬隼彦氏。高瀬氏はこれまでに小東京にある鹿島ビルのほか、旧ホテルニューオータニ(現ダブルツリー・バイ・ヒルトン)、東本願寺ロサンゼルス別院、ミヤコホテル、リトル東京プラザ、小東京ビレッジの2階建ビルなどを手掛けてきた。
設計料はとっておらず、ボランティアで携わった。「設計には1年ほどかかりました。武道館なので、武道がしやすいようにしようと心掛けました」と話し、完成を心待ちにした。
建設は9月中旬に着工し、2018年末の完成を目指している。
日系社会から喜びの声
憩いの場、14カ月後に完成
1994年から始まった武道館建設計画を振り返るLTSCのワタナベ前所長
会合の後、ワタナベ氏はLAの日系コミュニティーにも同じような人々の憩いの場が必要であると確信。見渡してみると小東京だけでなくロサンゼルスのダウンタウンにも公共のレクリエーション施設がないことに気付いた。
それからまもなくして武道館建設計画は実現に向け動き出した。当初は「リトル東京レクリエーションセンター」として計画が進行していたが、2009年に「ロサンゼルス武道館」に、今年に入りテラサキ財団からの寄付を受け、「ポール・I・テラサキ武道館」と命名された。
ワタナベ氏は「(完成予定の)14カ月後、ここに戻ってきてグランドオープニングを盛大に祝いましょう」と話し、起工式を迎えられたことを喜んだ。
武道館建設に350万ドルを寄付した故ポール・イチロー・テラサキ博士の息子でテラサキ財団のキース・テラサキ氏は、「子どもたちもウエストLAレイカーズなど日系のバスケットボールチームに所属しています。スポーツを通して武道館がコミュニティーの役に立つ存在になると確信したから寄付を決断しました。たくさんの人に活用してもらいたいと思います」と話した。
武道館はLTSCによって運営される。同計画をめぐっては2011年5月に土地を所有するロサンゼルス市と50年の賃貸契約を結んだ。12年には建設支援を目的とする「提案84」により、カリフォルニア州公園・レクリエーション局から500万ドル、13年にはLA市の公園やレクリエーション施設の建設や維持などに年間2500万ドルを捻出する「提案K」により、同市から130万ドルの助成金が支給されることになった。
また各財団のほか、企業からも寄付が集まり建物の屋根には三菱電機US社から提供されるソーラーパネルが取り付けられる。
起工式では太鼓やウクレレ演奏のほか、千葉総領事が合気道の奉納演武を披露。LA市の関係者や同計画の支援者、コミュニティーの代表者らが祝辞を述べた。