年が変わって1週間。1月7日、「春の七草粥」をSNSに乗せている友人が数人いた。あり合わせの野菜で作った人が多い中、スーパーで買ったという「春の七草セット」で本格的なお粥に仕上げた人もいて「へぇ」と感心する。自分はついついしそびれる新年の風習だが、日本人の間では今も守り伝えられている。
七草を食べる習慣は中国から伝わったもので、日本では古代より民間に広まっていたらしい。1年を通して季節ごとの「七草」があるが、1月7日の「七種粥」に用いられる「芹、ナズナ、御形、ハコベラ、仏の座、スズナ、スズシロ」が一番有名だろう。この中のほとんどは雑草みたいなものだし、「ナズナ」にいたっては、「ペンペン草」と呼んだ方がわかりやすい。決しておいしいとは言えないけれど、風習として毎年欠かさない人がいるからこそ残っている伝統なんだなと、今更ながらに思う。
日系社会では、さすがに「七種粥」まで浸透していない。けれどもお節料理やお雑煮は、日本人だけでなく日系アメリカ人との間でも会話に上る。日系人と結婚したほかのアジア人も、お雑煮やお餅についてちょっとした知識があって、「おすまし」なのか「味噌」なのかの違いも分かっているようす。「よく知っているなぁ」と自分の表情がほころんでくるのがわかる。自分の母国以外の伝統までも継承してくれているのを知り、ありがたい気持ちでその会話を終えた。
「睦月」は新年が始まり親戚や友人が集う、仲睦まじい月と解釈されている。年中行事も多く、懐かしい人と顔を合わせたり、賀状を交換するなどして人との交流を再確認できる機会でもある。
当地では元日のみのあっさりしたお正月だが、「Happy new year!」と声かけ合い、新たな年を歓迎する気持ちは同じように表す。
「戌年だね」と干支についても話が弾むというのは、渡米してきてから知ったことの一つ。互いの文化、風習に興味を持つのは洋の東西を問わずと言ったところだろう。
世界の関心が北の彼の地に集まった昨年の動向は水に流し、今年はぜひ、仲睦まじくやってほしいものだ。【麻生美重】