平昌冬季五輪。二人の金メダリストの晴れやかな笑顔が21日付本紙1面を飾った。
 「羽生が金!」の声に、テレビの前に飛んで行き、思わず拍手していた。当地では実況で見る術もなく、ニュースの動画に一喜一憂である。
 羽生結弦は、3カ月前の練習中に右足首じん帯を損傷していた。繰り返しビデオで見せられる転倒場面の生々しさに、復活は難しいとさえ思っていた。今回、連破の切り札にしようとしていた高難度の4回転ルッツの度重なる練習が右足に負担を掛けていたらしい。4回転ジャンプはわずか0・7秒の間に空中で体を4回転させる。着地の衝撃は体重の5倍以上だと。
 世代交代の波は23歳の羽生にして追われる身。4回転ジャンプを武器に10代の選手が台頭、複数の種類の4回転ジャンプを数多く成功させなければ勝利はつかめない時代になっているのだそうだ。
 4回転ジャンプは踏み切りの違いで最高得点13・6のルッツから10・3のトーループまで5種類あり、ジャンプの種類と組み合わせが得点を左右する駆け引きとなる。羽生いわく「自分の限界を引き上げて、自分の記録を超えられるようにしたい」。彼の強い攻めの姿勢にけがの回復が間に合ってよかった。何より、美しい滑走が健在であったことが嬉しい。
 もう一つの金はスピードスケート500メートルの小平奈緒。しかも五輪新記録だ。
 前回のソチ五輪でメダルを逃した小平は、オランダへ2年のスケート留学をする。ソチ大会で23個ものメダルを取ったスポーツ大国オランダの練習には「何があるのだろう?」の一念だったという。フォームの改善、精神面でも弱い自分が鍛えられたという。帰国してからも体の大きな外国の選手にはかなわないが、自分に適したトレーニング法があるはずと追究した。「トップと戦うために出来ることは何でもする!」の強い信念が彼女を支えた。「ライバルは自分自身」とも。二人に共通する言葉だ。
 金メダル獲得は才能だけでなく、その陰に日々、高みを目指そうとする弛まぬ努力があることを、二つのエピソードは教えてくれる。
 獲得した13個のメダルにはそれぞれの物語があるのだろう。彼ら、日本の若者たちの挑戦が誇らしく思える。【中島千絵】

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