「久しぶりに日本へ帰ったら実家の周辺がすっかり変わってしまって郷愁に浸ることも出来なくて…」とはFさんの話。
 変わる、といえばこちらは40数年住んでいる自宅周辺が、ここ2年ほどの間に、古い建物は取り壊されて更地になったと思うまもなく新しいビルが建ちコマーシャル・ベースで開発が進んでいる。2年前に108年ぶりにワールド・チャンピオンになったシカゴ・カブスの所為である。
 その昔は洗車施設がならんでいた球場前の広場にはギフトショップやカブスのミュージアム、娯楽設備やレストラン、バーがびっしり。ゲームの無い日はさほど繁盛しているとも思えなかったマクドナルドが壊され、その跡地にホテルが建ち、小さなスポーツ用品やみやげ物を売る店や、スターバックスのコーヒー店、セブン・イレブンが軒を並べていた通りは開発会社に軒並み買い上げられ、辺りがフェンスで囲われたと思うと、騒音と砂埃の中から1年余りで8階建ての高級アパートがにょっきり建ち上がった。
 電車やバスの便が良く、3~4ブロックも歩けばスーパー・マーケットが2、3軒はあるという、庶民が生活しやすい住宅街が、短い間に大変な様変わりで、「すごいところに家を持ってて、売れば一財産だね」などと言われるが、とんでもない。今のところ建物は築後100年以上でしょっちゅう手を入れなければならず、上がるのは固定資産税、増えるのは車の交通量と騒音、と住人にとってはあまり有難い話ではない。
 文句を言いながら、長い間のご近所のよしみで住み始めて以来のカブス・ファンである。
 リグレー・ファミリーがオーナーだったころは、近所の子供たちが放課後球場に行くと無料で空いた席でゲームをみることができ、毎年シーズンが終わると球場内の芝生をすっかりはがして歩道に出して、「どうぞお持ち帰りください」と無料提供してくれたものだ。そんな余禄も優勝とは無縁の弱かったカブスの今は昔の物語。
 この年になると急激な変化についてゆくのもひと苦労である。
 さて今年の優勝の行方は?【川口加代子】

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