英語で行われた集会で意見を述べたパネラー

LGBTQ当事者や家族らが意見交換

 日系コミュニティーの性的少数者(LGBTQ、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クィア)への理解や支援、情報共有などを目的に開催されている集会「Okaeri: A Nikkei LGBTQ Gathering」が11月17日、全米日系人博物館(JANM)で行われた。3回目の開催となった今年は初めて日本語でのワークショップが行われ、日本語を話すLGBTQ当事者、家族、理解者、支援者などおよそ20人が出席。参加者は自身の体験談や意見を交換し、日系コミュニティーにおける性的少数者への理解を求めた。

 同集会は2014年に開催されて以来、16年に2度目の集会が行われ、今年は3回目。日本語のワークショップは今回が初めての開催となった。「希望―LGBTQ 当事者とその家族によるストーリーテリング」と題したワークショップでは、まずパネラーが自身の経験談を話し、その後、LGBTQ当事者、家族、支援者、誰でも参加可能のグループの4つに分かれ、スモールディスカッションが行われた。


クィアとしての自身の体験を話す田崎彩さん
 パネラーとして自身の体験談を話したニューヨーク在住の田崎彩さんはLGBTに当てはまらない「クィア(queer)」。日本語で自身のアイデンティティーについて話すのは今回が初めてだという。
 幼少期から日米を行き来する生活を送っていたが、09年から米国を拠点に生活。アジア系や非白人のLGBTQコミュニティー団体の活動に参加するほか、現在は家庭内暴力や性暴力、人身売買などの被害者を支援する団体にも参加するなど幅広く活動している。
 「(自分の中には)2つの自我がある。米国での活動は米国の社会の中で英語で作られた世界。日本語で自身のことを考え、話す必要性を感じていた」と話す。
 日本人の両親には日本語で自身のアイデンティティーや世界観をどう説明すればいいのか「恐い」という思いがあった。しかしある時、自身のことを理解してほしいと両親に手紙で伝えた。すると返ってきた答えは「あなたが生まれた時から1人の人間として生まれたと思っていたから、好きなように生活してほしい」と肯定的だった。
 しかしその後話していくと「サポートはするけれどなぜみんなに言わなければならないの」と言われたという。転勤家族で米国でも日本人コミュニティーの中で生活していた両親とは理解の部分でギャップが生じていることに気付いた。「違う時代、言語の中で育った親とは溝がある。家族関係も親というより、対等な人間として考えるようにしている」と話す。
 自身の経験から「たとえサポートしてもらっていても自分が自分自身を理解していないといけない」と力を込めた。

母親の立場から自身の思いを話した矢部文さん
 一方、3年前に娘が女性と結婚したというニューヨーク在住の矢部文さんは母親の立場から自身の思いを話した。
 娘が最愛の人を見つけ、友人や知人に喜びを伝えると、日本人コミュニティーからの反応は閉鎖的だったという。「中には話をそらす人もいた。私がこれだけ娘の幸せを喜んでいるのに、それを無視する人々―。日本人のコミュニティーでは同性婚はまだ普通じゃないと思われていることに怒りを覚えた。今でもそれがトラウマになっている」と話す。「社会は私が考えているほどバラ色じゃない」と感じた瞬間だった。
 矢部さんは「社会全体が変わらなければいけない。多様性を受け入れてくれる社会でないと誰でも幸せになれないと思う」と話した。
 司会進行を務めたキム・ホンソンさんはLGBTQを受け入れられない人々の問題だと指摘。その後行われたスモールディスカッションではそれぞれのグループが自身の経験などを話し、参加者からは日本人コミュニティーにおけるLGBTQへの理解の必要性を訴える声などが聞かれた。【吉田純子、写真も】

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