昨年の全米オープンテニスで女王となり、日本人初の四大大会を制した大坂なおみ選手。現在行われている全豪オープンでも決勝に進んだ。ここで勝つと、世界ランク1位となり、これもまた日本人初の快挙となる。着実に階段を上がるグランドスラムへの期待は高まるばかり。
そんな大事な全豪を戦う最中、契約を結んでいる所属スポンサーである日本の食品メーカーが制作し、大坂が登場するアニメ広告が問題となった。大坂の褐色の肌を実際よりも白く描いてしまったのだ。
動画を確認したが、テニスの人気漫画の中にキャラクターとして表れる大坂は、同じくスポンサーを受ける日本のスーパースター錦織圭と「夢の共演」を果たしている。アニメは売れっ子作家の作品らしく完成度が高く、ストーリーは滑稽、描写も巧みでアニメならではの現実ではあり得ない表現は見ていておもしろい。だが、海外での人種差別と捉える批判的な意見を聞いて、そう思うのは自分が日本人だからなのか、と考えさせられた。
抗議を受けた同社は、公開していた公式サイトから映像を削除、すぐさま「故意ではなかった」などと謝罪したため、大問題に発展せずよかった。制作には何百人もが携わり、何百時間もかけ、費用も相当な額を費やしたことだろう。どうして制作の段階で、問題視しなかったのかが悔やまれる。
同社とのやり取りは、大坂のマネジメント会社が対応したそうで「次に私を描く時は、私にも話してほしい」と、願ったように当の本人には知らされなかったのが驚き。騒動に巻き込まれそうになったが「正直、あまり気にしていない。なぜ騒いでいるのか分からない」と話し、大会に集中。内心は残念だろうが、不満を一切口にせず、アスリートらしい対応に好感が持てる。
大坂はハイチ人の父、日本人の母を持つハーフ。ルーツの2国に愛国心を抱く中で、テニスの出場登録は日本を選んでくれて感謝したい。来年の東京五輪で金メダルを獲得し、日本列島を沸かせてもらいたい。このたびの変な騒動を忘れ、さあ全豪の決戦に気持ちを切り替えて応援だ。日の丸を振って。【永田 潤】