「Fly Me To The Moon(私を月に連れて行って)」。ジャズのスタンダードナンバーで、1960年代にフランク・シナトラが歌い大ヒットした曲だ。当時は折しも、米国が月への宇宙飛行計画「アポロ計画」を進めていた時。まさに時代を反映する曲として人々の心にも浸透した。1969年に人類初の月面着陸を成し遂げたアポロ11号の船内ではこの曲がかけられ、ニール・アームストロング船長含む3人の宇宙飛行士も聴いていたという。
しかし、実際にこの曲のように月面に行けたのはこれまで男性だけ。米国がアポロ計画を終了した72年までに月に到達したのは12人。そのすべてが男性だった。女性はいまだ月に行けていないのである。
しかし先日、NASAが2024年までに初の女性宇宙飛行士の月面到着を目指すと発表した。新たな計画の名は「アルテミス」。ギリシャ神話によるとアポロ(アポロン)の双子の妹で月の女神。ぴったりの名前だ。
アポロ11号から50年の歳月を経て、女性の宇宙飛行士が月面を歩く様子が全世界に流れる可能性も出てきた。実現すればアポロ、アルテミス、兄妹ともに月への旅を達成することになる。
人類初の月面着陸を成功させたアームストロング船長は月面で後世に残る有名な言葉を発している。「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」。50年前には叶わなかった女性宇宙飛行士の月面着陸の光景が見られれば、アームストロング船長の言葉のように、この出来事も人類にとって大きな飛躍となるのではないだろうか。
ちなみに世界経済フォーラム(WEF)による男女格差の度合いを示す「男女平等指数ランキング」によると昨年度、米国は対象149カ国中51位。日本は110位とG7で最下位という結果に終わっている。女性の社会進出に関してはまだまだ後進国だ。
米国初のアジア系宇宙飛行士で86年のスペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発により殉職した日系3世のエリソン・オニヅカさんが果たせなかった宇宙への夢をのせ、日系女性宇宙飛行士が月面を歩く姿も見ることができるのか。2024年まで見守りたい。【吉田純子】