料理文化センターへの意気込み語るJACCC新館長パトリシア・ワヤット氏

 「かつて祖父が日本で西洋文化を紹介したように、今度は私が日本文化をロサンゼルスで紹介したい」。先月、小東京にある日米文化会館(JACCC)の新館長に就任したパトリシア・ワヤット氏。就任から間もないワヤット氏に今後の目標やJACCCの新たな取り組みのひとつである「料理文化センター(Culinary Cultural Center)」について話を聞いた。【吉田純子、写真=マリオ・レイエス】

 JACCCでは現在、日本の食文化などを広く人々に紹介する取り組みが進められている。その一端となっているのが料理文化センターだ。
 日本人の母を持ち、日本食への関心が強かったというワヤット氏。JACCCの日本食に関する新たな活動展開には可能性を感じたという。「日系社会の中心とも言える小東京に日本の食文化を伝える料理教室を作ることは、文化発信の観点からも非常に重要だと思う」と話す。
 日本食は四季の食材を取り入れ、盛りつけの美しさだけでなく、調味料と食材が生みだす調和を味わうのも醍醐味。LAには特に日本食に影響を受けたシェフや日本食が好きな人も多い。
 LAダウンタウンのメトロセンター駅と小東京駅間を地下でつなぐメトロのリージョナルコネクター事業が完了すれば、交通の便も発達し、さらに多くの人が小東京に足を運びやすくなると指摘。「LAの中心にあるという立地を生かし、日本人が食べるような『本物の日本食』を日系人だけでなく、広くLAの人々にも紹介し、JACCCに来れば日本が学べる、そんな『居場所』のような存在にしていきたい」と話す。
 「彼女の日本の食文化への関心の高さ、食を通して日本文化を伝えたいという思いは今のJACCCの方向性とも一致した」と話すのはJACCC理事会メンバーのアラン・ニシオさん。企業やNPOでの経験が豊富で、ファンドレイジングでも手腕を発揮してきたワヤット氏に期待を寄せる。
 「フィエスタ祭りなど既存のプログラムやイベントを継続しつつ、彼女のビジョンをもとに、新たなアイデアも取り入れていきたい」と語る。
 父はアイルランド系アメリカ人、母は大阪出身。ケンタッキー州で生まれ、保険会社の重役だった父親の仕事の関係で、幼少期は各地を転々とした。5歳の時に日本語を学ぶため1年間だけ家族で日本に住んでいたことがあるという。
 米国で生まれ育ったが、日本人をルーツに持つ自身にとって、日本文化を理解することは自らに科せられた「ミッション(任務)」と位置づける。こうした思いは、知らず知らずのうちに祖父から受け継いだものであると語る。
 「祖父は日本でサイレント映画を作っていた劇作家の桝本清。人生のすべてを日本映画に捧げた人と母から聞きました。祖父には一度も会ったことはないけれど、見えない道しるべで私を導いてくれていると思っている」
 JACCCの新館長として今後、日本文化の発信を担うワヤット氏。「祖父が日本で西洋文化を紹介したように、今度は私がLAで日本文化を紹介したい」と意気込んだ。

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