自身の作品と日本酒についてユーモアを交えて話す小西監督(左)と酒スペシャリストのブラウナーさん
 ジャパンハウス・ロサンゼルス(海部優子館長)が定期的に開催する映画と食のイベント「ムービー&バイツ」が7日、ハリウッド・ハイランドにある同館ラウンジで行われた。映画ファンや日本酒の愛好家70人が集まり、LA在住のジャーナリスト兼映画監督小西未来さんの長編ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」(2016年)を鑑賞しながら日本酒のペアリングを堪能した。
 日本酒に魅せられた3人のアウトサイダーが異文化の中で日々挑戦する姿を映し出した「カンパイ!世界が恋する日本酒」は、ハリウッドの映画ジャーナリストとして20年以上のキャリアを持つ小西さんの初の長編作品。登場人物は「日本で初の外国人杜氏」「日本酒の伝道に尽くす米国人」「海外で販路を開拓する酒造メーカーのオーナー」。三者三様の熱意と葛藤が、日本の四季や海外の風景を織り交ぜた映像とジャズ音楽でテンポ良く描き出される。小西監督は「自分もアメリカではアウトサイダーなので異文化で挑戦する彼らに共感し興味を持った」と語る。
日本酒を味わいながら映画を楽しんだ参加者
 同館で食のイベントを担当するフード・キュレーターの今出朋子さんが進行役としてマイクを取り「映画のお供のポップコーンを今日は『唐揚げ風味』にしました」と紹介。「映画においしそうなものが出てきたら食べたくなる」(今出さん)ことから、映画と食のイベントを思いついたと言う。この日は2種類の日本酒とのペアリングでハードとソフトの2種類のチーズ、コーンナッツ、干しぶどうが来場者一人ひとりにトレーで配られた。
 イベント終了後は酒スペシャリストのジェシー・ブラウナーさんと小西監督による「酒エキスパート・トーク」が展開された。ブラウナーさんは、LAダウンタウンのレストラン「Bestia」のソムリエで、映画に登場する日本酒の伝道師ジョン・ゴーントナーさんのセミナーを東京で受講し終了した日本酒の専門家でもある。米国人の料理人が作る割烹料理の「Shibumi」レストランなどと組んで日本酒の文化・市場拡大に取り組んでいる。
岩手「南部美人」(手前)と京都・木下酒造の「玉川」に西洋のおつまみをペアリング
 Q&Aでは日本酒好きらしい手応えのある質問が相次いだ。映画を作る過程で日本酒を学んだという小西監督が精米歩合による酒の仕上がりの違いについて解説。ブラウナーさんも数字を用いて細かく説明した。作品中、福島の酒も取り上げられたことから「フクシマの酒」について危惧する声も。小西監督は福島の酒がきちんと検査され安心して飲める優れた日本酒であることを丁寧に説明した。
 真剣な眼差しで2人の話を聞き時折うなずく人や、2種類の酒を交互に口に含んで味を確かめ納得した表情を浮かべる人もいて、参加者それぞれが奥深い日本酒の世界を垣間見た様子だった。
 ロングビーチから来たチャーレスさん夫妻は同館からeメールで送られた案内を通じイベント開催を知った。「日本酒がテーマだったので来る気になった」と話す夫のエドさんは「米国に日本酒醸造工場があるのは知っていたが、外国人の杜氏が日本で酒を作っているのには驚いた」と話す。妻のジェニファーさんは「登場人物が男性ばかりだったので、『女性は日本酒に関わらないのか』と思いながら観ていた」。女性が主人公の「カンパイ」第2弾が製作され配給元が決まるのを待っている状態と知ると「早く観たい」と表情を明るくした。
Q&Aに耳を傾ける参加者
 今出さんは「欧米文化の人から説明を受けると米国人にも日本酒の理解が広がるのでうれしい」と話す。
 日本政府は先ごろ日本酒の輸出拡大に向け、製造事業者に対する規制を緩和する方針を固めたばかり。輸出用に限り新規の参入を認め、人気が高まっている日本酒の海外展開を後押しする。
 小西監督は今回の作品が日本酒ファン以外の層を日本酒市場に呼び込んだ日本での実績を強調し、日本酒業界の女性が困難に打ち勝ち活躍する姿を描く続編「カンパイ!日本酒に恋した女たち」の米国公開を期待した。詳細は―
http://kampaimovie.com/【麻生美重、写真も】
 
 

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