大統領選挙はいつも固唾(かたず)をのんで見守るのだが、今年はこれまで、いつになく私の緊張が続いていた。このまま同じ4年間が繰り返されたらアメリカは大変なことになるのではないかと、心配したからだ。
 この秋に18歳を迎え「大統領選に投票できる」と胸を張っていた孫は、早々に期日前投票を済ませた。州外に住む息子からは、「期日前投票が開始された翌日に投票を済ませた」との報告。これも他州在住の娘は期日前投票を、娘婿は郵便投票を選択した。「Time to Vote」というプロジェクトの下、投票に行くための時間を有給とするなどの制度を設ける企業が増大中との報道もあった。一票を投じることの意義がこれまで以上に重視された今年の大統領選だ。
 投票日のうちに大勢の決することの多い大統領選挙だが、今年はよほどの大差でもない限り当日決着は難しいのではといわれてきた。新型コロナウイルスという未曾有の伏兵の登場で、投票所での感染を避ける郵便投票が増加。郵送された投票の真正を確認してからの開票には、これまで以上に日数がかかると予想されたためだ。
 アメリカの大統領を選ぶ選挙人の選出方法は各州に任されているので、郵便投票のルールも州ごとに定められている。投票日までに到着する票が有効なのはもちろんだが、州によっては選挙前日(または選挙当日)までの消印があればその後一定日数内に到着すれば有効というものも。また、郵送された票の開票にしても、選挙日前に始める州もあるが、選挙当日でなければ開票できない州もあり、数の増えた今年は特に時間がかかりそうだ。
 なるほど、激戦になればなるほど、激戦州での郵便投票が大統領選を決することもあり得るだろう。これまでの統計では、郵便投票を利用するのは民主党支持者が多く、選挙当日に投票所に赴くのは共和党支持者が多いとか。そのためか、トランプ大統領は郵便投票批判が多く、法廷に持ち込んで争う姿勢さえ見せている。
 この選挙、やはり激戦州の郵便投票開票終了を待つ事態になった。大差で決着のつくことを願っていたのだが、残念。【楠瀬明子】

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