当地で活動する日本人俳優を対象としたコミュニティーサイトが立ち上がってから10年目に入った。幸代・Kとして活動する女優の林幸子さんが2011年にフェイスブック上で始めた「ハリウッドで活躍する日本人俳優」だ。映画関係者も含むこのグループには11月30日現在、838人のメンバーがいる。地域はハリウッド限定というわけではなくグローバルだ。
 寄せられる情報は多岐に及ぶ。オーディションやワークショップの案内、出演作公開の宣伝、録音スタジオの貸し出しや練習相手の募集、空き部屋紹介などの掲示板的な情報から、アーティストビザの取得や全米俳優協会を始めとする各種ユニオンカード取得などの専門的な内容に至るまで、異国でエンターテインメントを生業とする同胞の互助会的役割を果たしている。
 会員の大半が俳優ということもあり、コロナ禍の最近ではユーチューブ動画のリンクを載せる人も多い。英語発音や英会話のレッスン、太極拳指導などを軽妙な動画に仕立てたり、自身のパフォーマンスにプロ並みのエフェクトを付けて披露したりと、見ていて飽きない。
 まとまる機会のなかった日本人俳優たちが、オンライン上とはいえ一カ所に集まることが可能になった。
 10月19日、俳優メンバーの1人である県敏哉さんの訃報が同コミュニティーに伝えられた。59歳という若さだった。友人が載せたその投稿には、県さんが闘病の末に亡くなったとあった。
 1990年代に当地での活動を始め、日系テレビチャンネルのUTVではキャスターも務めていた県さん。クリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」では、加瀬亮さん扮(ふん)する憲兵の上司役を演じ印象的な場面を残した。共演した女優のブラック縁さんは自身のSNS上で、県さんらとあのシーンを「一緒に創り上げることができて本当に感謝です」とし、故人への深い思いをつづった。
 県さんのSNSは追悼バージョンに改められ、友人や知人は突然の別れに皆ショックを受けた様子で別れのコメントを寄せていた。
 後日、お別れの会がオンライン上で開かれ、参加者は在りし日の県さんをしのんだ。【麻生美重】

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