夏のニュースだったが、国連が職員向けに実施した、自認する人種についてのアンケートで選択肢に「イエロー(黄色)」を入れたところ、内部から批判の声が相次ぐ事態となった。英語圏ではイエローはアジア系に対する蔑称として用いられた歴史があるためだ。中止となったアンケートの選択肢は白・黒・茶・黄・混合、その他の6種類に分けられていたという。
 実体験としてイエローと侮蔑されたことのない私は、イエローを単なる記号としてスルーすることも可能ではある。そう考えれば、6種の色分けはシンンプルで、一理あるのかも。だが自分の肌を穴のあくほど見つめても、「なんでイエロー?」と思う。黄色では自分ごとに思えない。自分の肌が黄色だと思っているアジア人など、いるだろうか。
 子供時代に使った12色のクレヨンは、郷愁をそそるアイテムだ。誰もが覚えていることだろうが、その中に肌色という色があった。人を描く時にはまず肌色を手にし、顔の輪郭から描いたもので、使用頻度は高かった。ところが、もうここ何年も、日本のクレヨンから肌色が姿を消しているというのである。色がなくなったのではない。肌色という呼称をやめて、代わりに「うすだいだい色」などの名前になっている。人種問題などに配慮して呼称を消したようだ。知らなかった。
 今年、クレヨン大手のクレイヨーラは24色のスキンカラークレヨンを発売した。その名も「Colors Of The World」。化粧品会社のノウハウを利用して開発されたそうだ。確かに化粧品売り場のファンデーションの色数やヘアカラーの種類の多さは米国の多様性を端的に表しているといえる。24色は「Deepest Almond」から「Extra Light Almond」までのカラーシェードがある。私の肌の色を探してみると、ライトミディアムゴールデンあたりとなりそうだ。
 結局、私たちの社会は、たった6種類の選択肢にはめ込むほど単純ではない。新しいクレヨンは子供たちのお絵描きに多様性の教育を持ち込む、今年にとてもタイムリーな商品だ。違いを描くことを恐れず、複雑な色合いの世界を描くことを辞さない子供たちが育っていくことを期待したい。【長井智子】

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