さあ、新年の幕が開けた。正月お決まりのあいさつを交わし、すがすがしい気分になる。1年のスタートを切り、抱負を胸に今年こそは、と意気込む。
 日本の三が日は、初詣に行き参道の人混みをかき分け、ようやく拝殿にたどり着き、さい銭を入れて鈴を鳴らし、願いごとをする。そして、おみくじ、破魔矢、絵馬、お守りを手にする。開運を祈ったり、厄払いだったりと、思い思い。今年の願いの多くは、多事多難からの一転を願う平穏無事だろう。
 昨年は振り返らずにはいられない歴史的な年だった。五輪と米大統領選が重なる4年に1度の年で、われわれの母国日本での東京オリンピック・パラの準備が着々と進み、「2020」を目にするだけで胸が高鳴った。だが、期待はまんまと裏切られた。やつのせいで。世界の嫌われ者、新型コロナウイルスの仕業だ。
 感染はアジアから欧州、全米、そしてあっという間に世界へと広がり、言葉でしか知らなかったパンデミックの恐ろしさを思い知った。長期の自宅待機を見越した買いだめで、食料品店の棚からは商品が消え、不安があおられた。あの悪夢は二度と見たくはない。
 国と地方自治体が発令する拡大防止の指針は、緩和すると感染者数が増える悪循環で、外出自粛と営業制限は延長されジレンマ続き。そんな中、人種間の分断が社会問題化し、BLM運動へと発展した。ハリウッドの大規模なデモを私は取材する機会に恵まれた。参加者は若者ばかりで、明るい未来に向け強く意思表示し、一帯に熱気が漂った。ただ、集会自粛の真っ只中で、声高に叫ばれたソーシャルディスタンシングは見られず過密状態で、ある意味で感心した。非難も多々あったが、危険を顧みない行動は、いつか称賛されることだろう。
 大統領選も歴史に残る戦いとなった。予備選から注目を集め、開票速報は、激戦州で予想通りの接戦を見せ、支持者は気の抜けない日々が続いた。紆余曲折の末、政権は移行されることとなった。選挙結果は予想に反し差が付いたため、下馬評が当てにならないことが分かり勉強になった。
 次期大統領は、女性とマイノリティーを次々と入閣させ好感が持てる。積極的な環境対策が、日本にとって追い風となることを願う。日本はIT技術では列強に遅れをとっており、得意とする環境分野の見せ所で力を発揮しなければならない。日本でも昨年、新総理が誕生し、2月に来米する予定。強固な日米関係をより進化させ、われわれ在米日本人を喜ばせてほしい。
 昨年は災いの中で、インターネットを活用した便利な暮らし方が提案され、試してみると結構役に立つ。日用品のネット販売利用が増えているのもうなずける。働き方も一気に改革されつつある。一向に進まなかった在宅勤務は、できることが分かると加速し、移動に時間と費用を費やす無駄が省かれようとしていて、いいことだ。コンピューターに不慣れなお年寄りも周囲の期待に応え、頑張ってくれた。オンラインでの会議やセミナー、礼拝、習い事も今では板につき、ご立派。社会全体でニューノーマルを謳歌しているように映る。だが、やはり画面上の対面よりも実際に会う方が良く、今後の課題としよう。
 今年はコロナ禍を「コロナ過」に変え、ポストコロナを楽しみたい。再起の明るい年にするためポジティブに考え、希望を抱こう。【永田 潤】

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