新型コロナウイルスの流行を背景にした反アジア系住民への攻撃は、南カリフォルニアを含む全米各地で増加が報告されている。「アジア人への人種差別の暴力をやめろ」などと書かれたプラカードを持参した参加者は「もう黙ってはいない」と声を上げた。コミュニティー組織や政府機関がこの問題に取り組むことを求め、また人種コミュニティーを超えた団結を訴えることを目的に、集会はテーマに「コミュニティーを愛そう、アジアへの憎しみを止めよう」を掲げた。主催者は、このイベントを「反アジア暴力をきっかけにした、問題の防止と、癒やしのための空間」と表現した。
少数民族の輪広げ大きな声に
草の根組織が肩を組む
アジア系住民への差別反対集会の主催には日系の「ニッケイ・プログレッシブ」のほか中国系、韓国系など、アジア系の人権団体などが10組織以上名を連ねた。日米文化会館のアートディレクターだったアリソン・デラクルスさんも主催の1人として舞台に立ち、来場者を迎えた。
次に登壇したタイ人女性のタニーさんは、地下鉄ゴールドラインで帰宅中に車内で10分以上にわたって、見知らぬ男性から人種差別の言葉を浴びせ掛けられた。「お前は汚い、お前がコロナを持ってきた」。逃げ場のない電車の中で、タニーさんはいつ言葉以外の暴力が飛び出してくるかもしれないという恐怖に耐えねばならなかった。「その夜から人生が変わってしまった。自分がこの国での自由を失ったかのように感じた。安心して過ごせなくなり、家族や友人のことも心配になった」と涙ぐんだ。
イベントは歌や民俗芸能のパフォーマンスなどを織り交ぜながら展開し、組織のリーダーらは対応と集結を訴えた。聴衆はお互いに距離をとって立ちながらも講演者に耳を傾け、声援や拍手、時にはブーイングで応じた。
会場には主催団体の案内ブースも設置され、一角に設けられた「団結の壁」には、若者がメッセージを書き込んだ紙を次々と貼っていった。
小さなコミュニティーの輪も、AAPIとして団結すれば、より大きくなる。さらに、他のマイノリティーグループと集結すれば、声はもっと大きくなる。他人だと思っていた隣の民族コミュニティーも、話を聞いてみれば同じような高齢者の問題や、人種差別の悩みにさらされていることが分かる。お互いのコミュニティーを理解し、愛し合おうというイベントのバイブには、新型コロナのパンデミックが起こる前の小東京の熱気が、少しずつ戻ってくる手ごたえを感じた。
主催の団体の一つ、ニッケイ・プログレッシブは2016年に組織された日系の草の根人権団体で、ボランティアが運営する多世代のコミュニティー組織である。イスラム系米国人、移民やその他のマイノリティーグループの自由が脅かされる攻撃を見て、支援と抵抗の必要性を認識したことが結成のきっかけ。日系米国人コミュニティー内外の正義と公正の問題に深く関心を持っている。
集会に参加した団体は以下のとおり。
Nikkei Progressives、Chinatown Community for Equitable Development、Ktown4BlackLives、Tuesday Night Project、Sunday Jump、API Equality LA、Kabataang maka-Bayan/ProPeople Youth、Progressive Asian Network for Action、Palms Up Academy、J-Town Action and Solidarity【長井智子】