Azayの開店準備には約1年を要した。家族でプランを練り、2019年9月14日、小東京1街に、待望の日・仏料理レストランをオープンさせた。コロナ禍で多くの中小企業が窮地に追い込まれているが、フィリップさんは、どんな状況下でも、多大な時間と労力をつぎ込んでオープンしたレストランを守ると決意している。
かつて陽さんが修行した地から名付けられた「Azay」だが、陽さんと言えば、20年以上も続いたパサデナの名店「メゾン・アキラ」のオーナーとしてその名を知られた有名シェフ。そして、日本とフランスの伝統的な料理を融合させたフレンチ・フュージョンを確立させた第一人者でもある。2019年3月に「メゾン・アキラ」を惜しまれつつ閉店した後、陽さんは一刻も早く新しいレストランのちゅうぼうに立つことを待ち望んでいたという。
そんな陽さんが腕を振るう和食レストランとあってAzayはオープン当初から話題を集めており、昨年1月には、ロサンゼルス・タイムズの料理評論家リチャード・アディソンさんも伝統的な日本の朝食セットが味わえる店として取り上げた。
親子2代で取り組む心機一転のレストランビジネスは、時にお互いの譲歩も必要だが、協力もしやすい。「父はとてもストイックで頑固なところがあるが、それにとらわれてほしくない。だから、僕たちは常にメニューを改良し、日本の伝統的な料理だけでなく、さまざまな種類の料理を提供している。それがお客さんを引きつけるのだと思う」とフィリップさんは話す。
「あの業界は、チャンスがなければ経験すら積むことはできない」と語るフィリップさん。「実際、まだまだ業界の敷居は高い。今でも、ほとんどの作品において、僕だけがアジア系米国人のスタッフだ」。現在、フィリップさんは、フリーランスのテレビCM制作コーディネーターとして活躍しており、スタッフや現場に必要な情報や資料、素材などの調達や進行管理など広範囲にわたる業務を行っている。また、二足の草鞋(わらじ)となるAzayでは、新メニュー開発や業者との取り引きなどを行っており、「勤務時間の決まった会社勤めのような生活とは無縁だ」とフィリップさんは話している。
こだわりとユニークなビジョンを持つAzay。小東京でビジネスを展開していることも大きな意味合いを持つ。日系三世の母ジョアンさんの家系は、小東京と非常に縁が深い。レストランが入居する築100年以上のビルは歴史指定建造物で、フィリップさんの家系はは戦前戦後の小東京を見つめてきた。そんな歴史的な背景も手伝って、フィリップさんは小東京でのビジネスに誇りを持っており、今なお、小東京のコミュニティーに大きな変化とポジティブな影響を与え続けることを望んでいる。
コロナ禍でレストランとテレビCMの仕事が共に打撃を受けているにもかかわらず、どんな状況においても創造性を失わずに、忍耐強く前向きであり続ける姿勢を見せるフィリップさん。ビジネスだけでなく、苦境にあえぐ小東京のコミュニティーにおいても積極的に貢献し、優れたリーダーシップを発揮している。
Azay
226 E. First St., Los Angeles
電話213・628・3431
https://www.azaylittletokyo.com/
現在、ランチとディナーのテイクアウト営業を行っている。