6月最初の週末の朝、風船などで飾り立てた車が、ショッピングセンター駐車場に次々と集まった。新型コロナウイルスで行動が制約される中での、コミュニティー・パレードの始まりだ。シアトル市と近郊での外出禁止令が少し緩和されて、胸がちょっとだけ弾む朝のこと。
 パレード参加を長男が急に連絡してきたその日はたまたま、働きながら大学に通って修士号を得た長男妻の卒業式の日。といってもこれまでのような式は無く、午後からZOOMで行われるのだという。長男のトラックに、大学のスクールカラーの金色と濃紺の風船をたくさん結びつけると、華やかなパレード車が誕生。卒業ガウンを身に着けた長男の妻は荷台に座り、私たち夫婦も車に乗り込んだ。
 集合場所には、さまざまな車。人目を引くクラシックカーもあれば、色とりどりの風船で屋根を飾った車も。車にけん引される大型モーターボートには、赤い卒業ガウンの女子高校生7人が華やかに座り、スクールカラーの赤と黄で飾られたボートの船体には「卒業おめでとう」の大サイン。卒業生だけでなく、Black Lives Matterのメッセージを掲げた車もある。
 パレードは、ホーンを鳴らしながら、緑濃い住宅街をゆっくりと進んだ。
 家の前でパレードの到来を待っていてくれた人、ホーンを聞いて表に出てくる人、窓から見る人、たまたま庭仕事をしていた人…。中には、卒業生達に手渡そうと飲み物の缶を持って待っていた人もいる。皆がパレードに手を振って「卒業おめでとう」の声が飛び交い、応える卒業生は「ありがとう」と嬉しそうな声。車からまかれるキャンディーに子供たちは大喜びだった。
 コロナのために学年最後の数カ月はオンライン授業となり、同級生との交流は制約され、晴れがましい卒業式も無い、今年の卒業生だ。車列が住宅街を廻っていくと、ところどころの家の庭先に「2020年、高校卒業です!」のプラカード。卒業を何とか祝ってやりたいという家族たちの思いが生んだ企画だろう。パレードもまた、卒業生を祝福するコミュニティーの気持ちのこもったものとなった。
 今年卒業を迎える皆さん、ご卒業おめでとうございます!【楠瀬明子】

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