YouTubeは、サイバー社会で悪戦苦闘する、この昭和生まれの異邦人に娯楽と安らぎ、そして智恵を与えてくれる。
YouTubeが流す時代劇専門チャンネルはその一つだ。
北小路欣也演ずる「三屋清左衛門残日録」(池波正太郎)に出てくる清左衛門の生きざまにはほれぼれする。
二代目中村吉右衛門演ずる「鬼平犯科帳」(藤沢周平)の長谷川平蔵宣以(のぶため)火付盗賊改方長官、こと「鬼平」の男気がたまらない。
パンデミックの中で「下手の横好き」で始めたのがド素人料理だ。
YouTubeでは和洋中華の達人が秘伝を授けてくれる。
時代劇に出てくる江戸時代の人たちが食べていたものを作ってみたくなる。
鬼平が舌鼓を打つのは、軍鶏(しゃも)料理屋「五鉄」の軍鶏鍋だ。鶏肉のブツ切り、牛蒡(ごぼう)、しらたき、焼き豆腐、ネギを割下に浸して鍋で煮込む。鶏肉を一口頬張り、うま味の浸み込んだ焼き豆腐をつつく。冷酒「八重垣」がうまい。
三屋清左衛門の好物は、鱒(ます)の焼き魚、シメジ、風呂吹き大根、茗荷(みょうが)の梅酢漬け。山形県鶴岡の武家の食事だ(これは食材がなかなか手に入らない)。
そこへいくと、江戸の庶民が好んで食べた「深川めし」は簡単だ。アサリ、ハマグリなどの貝類とネギを煮込んだ汁ものを炊き込む。アサリの缶詰を開けて、野菜と一緒に炊飯器に入れればいい。漁師たちが仕事の合間に食べる賄い飯(まかないめし)がルーツらしい。
何百年も前に日本人が食していたものを、遠く離れた異郷の地で作って食す。あの時代に思いをはせる。温故知新―。
「田楽で飲むうち とんだ智恵が出る」(もっともこれは吉原行きの知恵らしいが)。
こんな楽しみ方は、21世紀に生きるディアスポラ(移民・植民)の特権かもしれない。(高濱 賛)
時代劇の作者の名前を取り違えていらっしゃるようですね。あと軍鶏鍋の所で鶏肉のブツ切り、と言うのは不味いんじゃないですかね。軍鶏鍋なんですから軍鶏肉と言うべきではないでしょうか。雑文とは言え一応羅府新報も新聞ですから正確である事を第一にすべきだと思います。勿論、そこまで気にする奴はいねえよ、とお考えであれば致し方無い事ですが。