在米30年以上を経て、最近、ふと「30年間、何をしてきたんだろう」と考えることがある。海外生活も人生の半分以上になり、自分が日本人であることを自覚しながらも、日本に帰国すれば「外国暮らし」が時折首をもたげてしまい、同伴の夫から注意される。「譲る心」や「敬う心」と相反して、自分に不都合なことには何をおいても反発してしまう行動の矛盾に、時にジレンマを感じる。
そんな反省をしつつ回顧していたら、私には25歳と22歳になる娘たちがいることに思い至った。そうだ、結婚・出産・子育てに、ぐわーっと時間をかけてきたじゃないか。
以前はファッションやアートの世界で自分を表現することに情熱を注いでいたが、子どもを産んでみて、この大事業こそが唯一無二のクリエーションだということに気が付いた。あの小さい卵子がおなかの中で大きくなり、これ一体どうやって産むんだろうという心配もよそに生命の誕生を迎え、見たこともない小さい人間の命を胸に抱いて涙を流している自分がいた。新しい命を大切に守りながら育てていく過程で、自分こそがどれだけ成長したか分からない。命はエネルギーの塊なんだ。そう思ったら、30年間、「それほどのらりくらり暮らしていたわけじゃないなあ」と安堵する。
妊娠出産という大事業は、母体の命の上で、卵子が何万分の一という精子とつながって育っていく。そしてこの世に誕生した生命は、いずれは朽ちて土に戻る。女性の体を通して同じことが繰り返される。生命はこの素晴らしいクリエーションの繰り返しである。私のミッションは、そんな命を守って、育んで、つないでいくことだ。
子どもは「産んでくれ」とは言わない、私が選んで産むことや育てることを決めた。そんな貴重な体験ができたことが私にとって何より代え難い大切な経験であるとともに、ぜひ娘たちにも同じ体験を楽しんでもらいたいと思う今日である。DNAをつないでいくだけが創造ではないということを実感する。(岡田直子)
