並んだ僧侶が経を唱え、大きな音を立てながら次々と黄色い経典を空中に振り下ろす

 小東京の高野山米国別院は15日、日本から高野山真言宗本山の今川泰伸宗務総長を筆頭とする50人以上の一団と、サクラメント、ポートランド、シアトルを含む北米の新旧開教師や信徒代表を迎え、米大陸開教110周年を祝う法会および式典を盛大に催した。同時に14、15の両日は日米文化会館(JACCC)のギャラリーで華道高野山の華展を開催し、特別開催した御詠歌、宗教舞踊、華道の教室と併せて荘厳な高野山仏教の真髄を当地に伝えた。

法会を終え厳かに退席する高僧ら

 15日に行われた法会は同別院で初めての「大般若経転読法会」という特殊な会で、孫悟空や猪八戒で有名な西遊記のモデルとされる玄奘(げんじょう)三蔵法師が16年を費やして天竺(インド)から唐(中国)の長安に持ち帰り、約4年をかけて中国語に翻訳した膨大な経典「大般若経」600巻を転読するというもの。入堂、奉詠、奉納舞踊に始まり、献花、焼香などに続き、ハイライトの大般若経転読では、炎が燃え盛る護摩祈祷の中、並んだ僧侶が大きな声で経を唱え、大きな音を立てながら次々と黄色い経典を空中に振り下ろす儀式の迫力が会場を圧倒した。
 続く式典では高野山真言宗総本山金剛寺金剛峰寺座主・長谷部真道大僧正からの祝辞が今川師の代読により紹介された。長谷部師は北米110年の開教の苦労をたたえるとともに「北米開教が150年、200年と続くように」と激励した。また、曽根健孝在ロサンゼルス日本総領事は、インドのニューデリーに赴任していた際に仏教発祥の聖地ブッタガヤを訪れた経験を話し、紀元前5世紀ごろの誕生から今に伝わる仏教の心について触れ、また小東京で110年伝わる北米高野山が第2次世界大戦中および戦後に日系人のために果たした役割や、文化や伝統を広める功績を認識しているとし、感謝を伝えた。

経典を振る別院の松元優樹主監

 北米開教の歴史は、真言僧青山秀泰師が1912年にロサンゼルス市内エリシャンパーク地区に設立した高野山大師教会に始まる。日米開戦の前年に日本人街の中心で高野山米国別院として活動を開始し、60人に及ぶ開教師、信仰を続けた在米信徒により、日本人コミュニティーの中心的存在として今日まで受け継がれている。真言宗は空海(弘法大師)を開祖とする、平安時代から現代まで続く仏教の宗派の一つで、今年は弘法大師誕生1250年に当たる。
 式典の最後には、ハワイのマウイ島ラハイナで起きた大規模山火事で被災した、高野山真言宗の海外開教地として一番古い寺であるラハイナ法光寺の復興を願い、別院の松元優樹主監からハワイ開教区の渡邊全久総監に義援金が渡された。
 松元師によると、転読は大般若経全600巻を、高野山高校の生徒ら20人が読み上げた。サフランが練りこまれていることから虫喰いにならず、長年受け継がれている黄色の経典は、日本の400字詰め原稿用紙および明朝体文字の原型でもあるという。

華道高野山展

 高野山米国別院の110周年記念「大般若経転読法会」は目を見開くダイナミックな転読の儀式とともに、仏の教えを和歌に詠み仏の説いた真理を歌に唱えるという御詠歌、仏の所作を踊りに託す仏道修行という宗教舞踊、花を通じて仏心を表す華道が盛り込まれ、荘厳な高野山仏教の魅力を余すところなく見せつけた。米国別院は「日本の文化でもある仏教の精神を、日系の人たちやその他の人たちに理解していただき、小東京に来たらそこに日本があると感じていただける街作りに関わっていく意義は大きい」と、次の100年を見据えた決意を語っている。 (長井智子、写真も)

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