ロサンゼルス郡のキャスリン・バーガー委員から贈られた表彰状を披露する曽根健孝総領事(左から2人目)とデルデリアン大主教(右隣)

 日本総領事館はこのほど、バーバンク市の北米アルメニア教会(西部教区)でアルメニアとの友好イベントを開催した。昨年春に日本を訪れた同教会のデルデリアン大主教と当地のアルメニアコミュニティー関係者が訪日の報告を行った他、芸能と料理を通じて日本とアルメニア両国の文化を紹介するなどし、当地におけるエスニックコミュニティー同士の理解と友好を深めた。

訪日報告を行うアルメニア基金代表のマリア・メフラニアンさん

 訪日報告を行ったアルメニア基金代表のマリア・メフラニアンさんは「短い期間だったが驚いたことがたくさんあった。安全な道に自動販売機が並んでいたり、多くの人が小さなスペースを調和を持って共有していたり。また、茶道を体験したが、そこで習った『一期一会』という言葉にとても感銘を受けた」と話した。さらに、近代日本経済の父として知られる渋沢栄一の資料館を訪れたことも紹介した。1915年に始まったトルコ系オスマン帝国によるジェノサイドでは、弾圧を受けたアルメニア難民を日本で同氏が先頭に立って支援したことが大きく、日本とアルメニアの歴史と友情について感慨深く語った。訪日には他にグレンデール市の行政トップのルービック・ゴラニアン氏らが参加した。

 アルメニア文化の紹介では、同国出身のバイオリニスト、アショト・デュマニアンさんが率いる弦楽四重奏団がアルメニアの作曲家コミタス(1869—1935)の楽曲を中心に5曲演奏し、アルメニア音楽の持つ美しさを見事に伝えた。アルメニアの風景を思わせるような詩的で胸を打つコミタスの旋律は、弾むようなリズムにおいても少し物悲しく、日本人の持つ叙情性と深く通じるところがありそうだ。一方、日本の文化紹介では日本舞踊坂東流の坂東秀十美さんが日本舞踊の名曲、長唄・藤娘を披露した。本衣装を着け、藤の枝を持ち、藤の花の精となって踊る様子は、日本画から飛び出してきたかのようにあでやかだった。

アルメニア出身のアショト・デュマニアンさんが率いる弦楽四重奏団

 日本総領事館はエスニックコミュニティーとの友好イベントを定期的に行っており、そこには日系人が属するAAPIの各コミュニティーや当地で最大のラテン系コミュニティー、さらに黒人やユダヤ系などが含まれる。アルメニア系コミュニティーとのイベントは2018年から行っている。ロサンゼルス大都市圏のアルメニア人コミュニティーは全米で最大規模であり、ロサンゼルス郡には20万人が暮らしているといわれている。
 曽根健孝総領事は「アルメニア人のコミュニティーは大きく、さまざまな分野で成功している人も多い。日系コミュニティーとの協力も、いろいろな形でもっと拡大すればいいと考えている」と述べ、両民族コミュニティーの一層の友好に期待を寄せた。さらに他の民族コミュニティーとのつながりについても触れ、「日系人のコミュニティーが求心力になる形で、他コミュニティーとの関係を強化して行くことができればいい」と締めくくった。

坂東秀十美さんの日本舞踊を鑑賞する参加者

 今回は日本政府の招待によりコミュニティーのリーダーが訪日したが、これを機に今後は若者や草の根レベルに交流が広がっていくことが期待されている。
 アルメニア共和国と日本の両国は距離にして7755キロ離れているが、ここロサンゼルスでは、二つのコミュニティーは簡単に手を取り合うことができる距離にある。訪日団の1人は「日本を訪れてみて、ホスピタリティーの精神を共通点と感じた」と話している。アルメニアのアララト山は形が日本の富士山と似ているばかりでなく、ノアの箱船がたどり着いた聖地としてアルメニア人の心のよりどころとなっているが、それは富士山を神聖な山と感じる日本人の心ともよく似ている。また、日本人が大好きなメロンパンは20世紀初頭に帝国ホテルに雇われたアルメニア人の菓子職人が発明したという説がある。
 日本にいたら交流の機会が少ないかもしれない他文化と出会い、理解を深める機会が得られることが、ロサンゼルスという多様性の都市に住む大きな魅力だろう。
(長井智子、写真提供=北米アルメニア教会)

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