米野球にかつて黒人選手だけで組織した「ニグロリーグ」があった。リーグ発足は1920年。当時は人種差別があったため白人選手の大リーグではプレーを許されず、黒人で固めざるを得なかったのだ。その七つあったニグロリーグの成績を大リーグ機構が認め、公式記録として取り入れることを先週、発表した。
 通算最多安打を誇るピート・ローズは、マイナーリーグや日本のプロ野球など、実力差のある他リーグの記録を大リーグと比較することすら嫌う。私も彼に同調し前々から疑問に思っていたが、このたびは両リーグの成績を合わせたのだ。
 成績統合によりどんなことが起こるのか興味を持っていたが、ふたを開けてみると予想通りの理不尽と思える結果だった。大リーグの伝説的な選手で通算打率3割6分7厘のタイ・カッブは首位から陥落し2位に。さらに「野球の神様」とあがめられるベーブ・ルースの通算長打率などの記録までもが抜かれてしまったことに驚くと同時に正直、残念に思った。
 順位が下がった往年のスパースターは、天国でこの結果をどのように考えているのだろうか。そしてファンは? 日本人ファンとしては、数々の大リーグ記録を打ち立てたイチローが気になったが、幸いにも1シーズン262の最多安打数は首位のままでホッとした。ニグロリーグは試合数が少なかったため1シーズンの安打総数は伸びなかったようだ。統合後も上位10選手の中に黒人選手はおらず、写真の10人中9人は白人ですでに他界し、写真はもちろん白黒。ただ1人カラー写真のイチローの偉大さを改めて思い起こさせてもらえた。
 現在、大リーグは黒人選手が少なく、黒人のファンもバスケやアメフトに流れがちで減ってきている。だから記録の統合は黒人ファンを取り込むためのマーケティング戦略かもしれない。それに決めたのは野球の専門家なので節穴のはずはなく、この統合を疑問に思ったのは私の知識不足のためだろう。これからは黒人の選手を注目したい。身近なのはドジャースのリードオフマンのベッツ選手。この黒人選手の模範の活躍に期待したい。(永田 潤)

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