エバーグリーン墓地で南加和歌山県人会創立者で初代会長の湯浅銀之助の頌徳碑に献花する岸本周平知事(右)

 岸本周平・和歌山県知事を団長とする和歌山県からロサンゼルスを訪れた訪米団がこのほど、日系諸団体を回り交流を図った。一行は滞在3日間のスケジュールの中で当地の和歌山県人会と旧交を温めたり、県産品の売り込みや観光客誘致に努めるなど、精力的に活動した。

 和歌山県の訪米団は岸本知事の他、谷洋一・県議会南北米諸国友好議員連盟会長や県国際交流協会の職員ら計14人から成り、南加和歌山県人会、全米日系人博物館(JANM)、日本総領事館、ジャパンハウス、エバーグリーン墓地、ロサンゼルス・マリタイムミュージアム、ターミナルアイランド、日米文化会館、羅府新報、東京セントラル・ガーデナ店を訪問した。

 岸本知事は今回の訪米の目的について、①南加和歌山県人会訪問②和歌山県立近代美術館(MOMAW)とJANMとの姉妹ミュージアム提携締結式参加③県産品を紹介する「和歌山フェア」視察―の3点だと説明する。

 1911年創立の南加和歌山県人会は、最も規模の大きい海外県人会の一つである。和歌山県が昨年10月に開催した第2回和歌山県人会世界大会では、海外の県人会として最多の100人超が南カリフォルニアから参加したという。岸本知事は今回の訪米を「昨年、大勢の方に来てもらったお礼に来た」と強調する。広島、沖縄、熊本、山口、福岡に次いで6番目に海外移民が多い和歌山を「移民大県」と表現し、「チャレンジ精神が旺盛」と、県民性を誇った。

 MOMAWとJANMの関係については昨秋、両館が協力して互いに展覧会を開催して成功を納めた。両館の姉妹提携調印の立ち会い人として祝辞を述べた岸本知事はMOMAWで昨秋、カリフォルニアの移民史と、米国で活躍した和歌山県出身のアーティストの作品を展示して「大変高い評価を得た」と述べ、今後の連携に期待を寄せた。

 知事は一昨年の就任以来、県の運営に「多様性(Diversity)」「公平(Equity)」「包摂(Inclusion)」を掲げている。「JANMと協力した展示はまさに、この三つの方向性と同じだったので、和歌山県は誇りに思った。この二つの美術館と博物館が協力して、移民の歴史を中心に追求していくことを支援したい」と抱負を述べた。

 さらに、東京セントラル・ガーデナ店で開催された和歌山フェアでは、海外における日本産品の市場トレンドについて説明を受け、さらなる和歌山県産品の輸出に向け協力することで合意した。知事は「これからも、生のものから加工品まで、和歌山の物産を宣伝したい」と強く語った。「和歌山県はフルーツ王国だ」と力を込め、名産の柿、みかん、桃、梅、キウイなどを挙げた。また魚介類や熊野牛を例に「和歌山県にはおいしいものが多くあるので、米国でも紹介していきたい」と意欲を示した。

 県はまた、主力産業の一つとして観光に力を入れており、キャッチフレーズ「聖地リゾート」を掲げている。知事は県が世界的にも有名で、外国人を引き寄せるスピリチュアルな魅力を持つ高野山と世界遺産の熊野古道を挙げ、「世界から観光客を呼ぶ要素として、『スピリチュアリティー』、『サステナビリティー』、『セレニティー』があるが、和歌山県にはこの三つがある」と胸を張った。

 訪米団は訪問先の代表と活発に情報・意見交換に努めた。総領事館での会談では曽根健孝総領事に県の観光と物産品振興への協力を依頼。ジャパンハウスでは海部優子館長と県のPRについて意見を交換した。

 和歌山からの移民が多く眠るボイルハイツのエバーグリーン墓地には県人会役員らとともに訪れ、先人の労苦に心をはせた。県人会創立者で初代会長の湯浅銀之助(1869~1926)の頌徳碑に献花した。湯浅は和歌山県紀の川市(旧粉河町)出身で、1897年に雑誌「新日本」、1902年に「羅府日米」を創刊。南加在留日本人のリーダーおよび先覚者としての功績をたたえて頌徳碑が建立されたという。

 ターミナルアイランドの常設展示があるロサンゼルス・マリタイムミュージアムでは、和歌山県人を中心とする日本人漁師のコミュニティーや和歌山県からの移住者の当時の暮らしについて太地人系クラブ会員から説明を受けた。

 日米文化会館のパトリシア・ワイアット館長と高野山真言宗米国別院の松元優樹主監とは、来年1月に日米文化会館で開催する精進料理プロモーションへの協力や、将来日米文化会館で催す県産品のPRについて意見を交わした。

 訪米団は南加和歌山県人会主催の夕食会でフィッシャー敦子代表ら県人会員の歓迎を受け、交流を深めた。滞在最後の夜は世話になった県人会役員やJANMスタッフらを招いた県主催の夕食会を催した。県人会のフィッシャー代表、坂地純子さん、竹下ジェイミーさんに功労者表彰状を贈呈。和歌山県人会員との固い絆を確認するとともに、2028年に開催する第3回和歌山県人会世界大会への参加を呼びかけた。

和歌山県主催の夕食会の参加者。県人会役員やJANMスタッフらを招いた
日米文化会館を訪問した岸本知事(左から6人目)ら訪米団一行は、パトリシア・ワイアット館長(左から5人目)と高野山真言宗米国別院の松元優樹主監(左端)らと来年1月に催す精進料理プロモーションへの協力や、将来日米文化会館で催す県産品のPRについて意見を交わした

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です