私がシカゴに住み始めたのは1970年。それ以来初の民主党全国大会(DNC)が19日から当地で開かれた。前回シカゴで開催されたのは私が渡米する前の68年で、ジョンソン大統領の時代である。当時は長引くベトナム戦争に反対するデモが1万人規模で繰り広げられ暴動も起こり、リチャード・デイリー市長が開催地のホストとして神経をすり減らしたそうだ。
 今回はイスラエルとパレスチナの戦いに関して、米国のイスラエルに対する軍事援助や介入を阻止しようとする市民団体がやはり相当な規模でデモを繰り広げたが、ブランドン・ジャンセン市長の要請を受けてラリー・スネリング警察署長が最前線で警備の総指揮を執った。ニューヨークに次いで全米2番目の規模といわれるシカゴ警察だが、開催場所に総力を投入すると、一般市民の治安がおろそかになる。ましてや連日のように発生する発砲事件、店舗へ車ごと突入して商品をごっそり盗んでゆく強奪事件が後を絶たない毎日、市民の暮らしも大型イベントの安全も同時に守らねばならない大役だったが、どうやら無事に果たしたようだ。
 党大会のほうはバイデン大統領が、先日のトランプ氏との公開討論会と比べてまるで別人かと思えるほどの力強い演説をした。潔くハリス副大統領にバトンを渡したことで肩の荷を下ろし、彼女のサポートに回った心の落ち着きが感じられた。
 3日目はオバマ前大統領やミシェル前大統領夫人、そして里帰りしたオプラ・ウインフリーの登壇で会場は沸点に達した。副大統領候補に選ばれたミネソタ州知事、ティム・ウォルズ氏は州兵としての従軍経験、高校の教師、フットボールチームのコーチという多彩な経歴。他人を思いやる「隣のおじさん」的な親しみやすさが歓迎された。
 最終日、カマラ・ハリス副大統領は正式に党の大統領候補の推薦を受諾し、DNCは天井から放たれた3色の風船が渦巻く中、興奮、歓声のうちに閉会した。大統領選まで2カ月あまりで候補者を入れ替えた民主党のギャンブルは、支持率の上昇を見る限り成功したようだ。米国初の女性大統領の誕生が待たれる。(川口加代子)

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