今月初め、夕食の支度をしようと冷蔵庫を開けると、冷凍室で凍っているはずの肉が溶けている。何の前触れもなしに、わが家の冷蔵庫は壊れてしまっていた。
日系食料品店で納豆がセールだったので6パックも買い込み、油揚げも3袋と、いつも以上に冷凍室はいっぱいだった。欲に駆られて詰め込み過ぎたことを反省したり、いや、20年も使っているから寿命だろうかと思ったり。なんとか生き返らせようと夫と2人で空気吸い込み口の埃を取り除くなどするうちに夜となり、夜が明けてスーパーマーケットに氷を買いに走った。
牛乳などはしまい込んでいたキャンプ用のアイスボックスに氷を入れて保管。冷蔵庫普及前だった子どもの頃を思い出しながら「アイス時代に逆戻りだね」と軽口をたたく余裕もまだ少しはあった。冷凍庫内の肉と魚の大半は長男の家に預け、傷みやすい挽肉などは急ぎ料理し、大量買いをしていたサケとチキンは燻製(くんせい)に。燻製は、冷蔵庫どころか氷もなかった時代の究極の保管方法であることを、くすぶる煙の匂いを嗅ぎながら実感した。
焦ったのは、なじみの家電店に着いてからだ。33x66インチの冷蔵庫の再購入は簡単だと思っていたが、「その小型のサイズは少なくて」と言われて驚く。知らぬ間に世の中の台所用家電は大型化したらしい。その上、今注文して入荷は11月か12月だと聞いて仰天。結局、似たようなサイズの冷蔵庫を他の店で購入できてホッとしたが、配送日までのほぼ1週間はやはり毎日氷を買いに走ることになった。
待望の配達の日、担当者が「今ごろの冷蔵庫の寿命は、7年から11年くらい」という。まさかと思ったが、日本でも2人以上世帯での冷蔵庫買い替えは平均12年と9か月で、部品の保管期限が製造終了から9年と規定されているとか。決して安い買い物ではないが、日米を問わず今頃の冷蔵庫寿命はその程度に設定されているのだろう。覚悟するしかない。
地震、豪雨、ハリケーンなどの被害に比べれば冷蔵庫が壊れるぐらいはささやかな災難であるものの、毎日の暮らしがどれほど冷蔵庫に頼っていたか身に染みた1週間だった。(楠瀬明子)
