新聞やテレビのニュースをしのぐ勢いの人気のネットの情報。簡単で便利に入手できる半面、その真偽の確認が難しいものも多く、眉唾物にだまされている人もかなりいる。それを思い知ったのは、ドジャースと大谷選手に関する日本語のネット情報で、球場で取材し確かめたことが正反対で、それを誰も正さずネット上に放置され、あたかも「真実」のように拡散されているのが恐ろしい。
だが、その疑わしいネット情報の考えを変えさせられたのが今月行われた兵庫県知事選挙だ。知事は自身のパワハラや内部告発文書の処理などが問題視され、県議会の百条委員会にかけられ、全会一致で不信任決議を受け自動失職した。マスコミとネットはこぞって知事を糾弾。私もその1人だった。そして、出直し選挙が公示されたが、何とその前知事が立候補したのだ。
知事はソーシャルメディアを駆使した戦略で訴えたがもちろん失墜した信用は回復せず。そこに、知事の潔白を訴え匿名の情報と音声ファイルがネットに出回ると、知事が既得権益や天下りなどと闘い、経費削減をしたなどの功績が称賛され、形成は一気に変わる。ネットの利用者はその音声ファイルの存在すら報じない大手メディアに対し激怒したが、大手メディアの立場としては放送法や公選法で中立・公正を求められるため、慎重な裏取りをする時間がなかったようだ。
選挙戦初日、知事は駅前に1人ポツンと寂しく立って演説したが、「真実」と自己判断した有権者は「知事ごめんなさん」と謝り、最終日夜の演説には数千人が群がった。結果は大差で再選し返り咲き「ネットの勝利」と支持者は喜んだ。
知事は主人公のボクサーが打たれても、打たれても立ち上がる、好きな映画「ロッキー」を見て励まされたという。知事はまさに、その主人公のように逆転劇を演じたのだ。勝利宣言では「より謙虚に…」と自らを戒めたが、もう十分過ぎるくらい謙虚。「自分に投票しなかった民意も大事にしたい」の思いやりに感動した。知事に言いたい。「疑ってごめんなさい。頑張ってください」(永田 潤)
