
「高齢者を守る会(KSCA)」とロサンゼルスの「西南センター」が日本人高齢者を支援するデイケアセンターの年内開設を目指し、計画を本格化させている。この取り組みに対し、長年の支援者である藤本章さんが1万ドルを寄付した。藤本さんからの寄付は今回が3度目で、今回の寄付は、同センターで働く予定のインターン生・清水谷耀一さん(USC大学院卒)の奨学金に充てられる予定。将来の運営を担う人材の確保を通じて高齢者支援につなげる狙いがある。
藤本さんは、同会が2022年に初めて開催したバザー以来、経済面・精神面での支援を続けてきた。1万ドルという多額の寄付を受け取ったKSCAと西南センターは「地域高齢者の安心を目指す私たちの活動を支える、大きな力になる」と感謝した。
実業家の藤本さんは小東京で「オリンピックショップ」を経営。海を渡り、米国で皿洗いからスタートした半世紀の歩みは実を結び、70歳を超えた今、コミュニティーへの恩返しを考えるようになった。「皆さんの努力に対する感謝の気持ち。少しでもお手伝いができればと寄付させていただいた」と述べた。また、「一部の人がたまたま寄付するだけではなく、活動の内容や意義を広く知ってもらい、多くの人に協力してもらえるようにしたい。そうすれば寄付の輪が広がるのではないか」とも語った。関係者からも、活動を知ってもらうことで支援の裾野を広げ、より多くの協力を得たいという強い思いがにじんだ。

藤本さんを迎えて寄付の贈呈式が行われたこの日、KSCAの入江健二医師は、日系高齢者が安心して通えるデイケア施設は地域にほとんど存在しないことを説明した。だが19年の調査では、回答者1500人のうち207世帯が介護の困難を訴えており、高まるデイケアの必要性に応えて施設整備は急務の課題となっている。
開設予定のデイケアでは、日本語の話せる医師、看護師、ソーシャルワーカーを配置し、運動や音楽活動、食事提供、送迎サービスなどを行う。計画では定員は1日45人。初期は週3日営業から始め、将来的に平日5日へ拡大する。利用料は1日120〜150ドルで、将来的にはMedi—Calなどの適用を目指す。年間運営費は約80万ドルと見込まれ、初年度は寄付や助成金で赤字を補う計画だ。寄付や助成は活動継続に欠かせない課題である。
2組織のパートナーシップ成立を経て開設が間近の現在、入江医師は「このミッションをしっかり形にし、さらに先のナーシングホームの建設に向かいたい」と意欲を示した。
贈呈式の参加者からは、100年以上前に米国へ渡った日本人が差別を受けながらコミュニティーを築いた経験は、現代の日本における外国人コミュニティーの形成と重なるとの見解も出された。移民家族は50〜100年単位で同化と共生を見据える必要があり、2世・3世になると同化が進む一方、1世は母国文化を保持する傾向が強い。それが当地に日本語のデイケアが必要な背景でもある。
KSCA理事の古賀慎一郎さんは2年前から活動に参加。今後の資金調達と広報活動を日米双方で展開する方針を示し、「米国内だけでなく、日本の在住者や企業からの支援も募り、SNSや著名人、国際イベントを活用した発信で活動の知名度を高めたい。特に『日系コミュニティーへの恩返し」という価値観や、活動の社会的意義に賛同を得られるように働きかけることが重要だ」と述べた。また、日米共に移民政策が変化している中で、米国で日系人が暮らすことの価値、未来への安心感をデイケアから感じ取ってほしいと話した。
藤本さんの1万ドルの寄付は、単なる資金援助にとどまらず、地域高齢者支援と日系人の経験継承という二つの使命を後押しする。西南センターとKSCAは、地域の高齢者に安心を届けるデイケア運営と、日系人が歩んだ移民共生の知恵を広く社会に共有する活動を進め、ロサンゼルスから日本、そして次世代へとその価値をつなげていく考えだ。(長井智子、写真も)

