誘いを受けて伊豆半島に「河津の桜」見物。2月下旬、各地ではまだ雪の便りがしきりである。車は東名高速から厚木街道へ、小田原を経て真鶴・熱海へと快調に進む。海がきれいだ。あちらこちらにいかだが浮かんだり、海沿いの街道にいろいろな構築物が増えたり、岩々に朝から大勢の釣り人が張り付いていたりする。
網代、伊東を過ぎたあたりからチラホラと街道沿いに桜を見かけるようになった。2月に桜? と半信半疑だったがやはり伊豆は黒潮に面し暖かいのだ。
手前の稲取温泉は雛の吊るし飾りで有名。道をそれて海岸へ。横に博物館があり、広場では地元の太鼓と踊り。広場の横に足湯があり温まりながら踊りを鑑賞できる。いかにも地方の祭りといった風情。生活様式の変化で捨てられる運命の吊るし雛を生かしての町興し、天井から吊るされた雛の数々は見事。
稲取を後にするともう河津町、予想外の人出で町の駐車場はどこも満杯。ぐるぐると廻った末に町外れの道路わきに駐車。ぞろぞろと人波にしたがって歩いてゆくと目の前に川が開け、川沿いに満開の桜・桜・桜・・・。桜並木に寄り添うように黄色の菜の花が続く。大勢の花見客が酔ったように桜花を見上げてそぞろ歩き、川原に降りた人たちは下から桜を眺める。道端には屋台が並び試食があり呼び込みの声が飛びかう。ああ、ここは日本だとついロサンゼルスの花見と比較してしまう。
海岸沿いは混むからと帰路は天城越えと決めたのだが車が動かない。山中で交通混雑もないだろうに大型バスがすれ違いに苦労するからか、それとも山中も混むほど車で賑わっているのか? 天城峠へかかると何と一面の残雪が木々の足元を覆っている。下界の桜が嘘のようだ。浄蓮の滝、湯ヶ島、修善寺、大仁、長岡と昔懐かしい温泉地を過ぎてやっとの思いで東名高速へ。なんと帰路は6時間近く、日本の観光は忍耐が必要だと身に沁みて感じた次第。でも久し振りの行楽、春を待ち桜に思いをかける日本人の気持ちを思い出した。【若尾龍彦】