同じブロックに住む日系三世氏はさきごろリタイアし、今では週2回のゴルフと庭いじりが生き甲斐という。好きなことをしながら元気に過ごすシニアの嬉々とした明るい笑顔はいかにもアメリカン。
 一方、アメリカで長年働き、いざシニアシチズンの仲間入りをすると、日本へ帰国してしまう人も多い。生活の質を維持し、アメリカの年金だけで暮らせる場所を求めて台湾、フィリピン、サイパン島、マレーシアなどへ引っ越していった人もいる。
 人間いたるところ青山ありで、人にはさまざまな生き方がある。住み慣れた土地でゆっくりしたいと思う人、新しい土地で新しい発見、新しい出会いを求めていこうとするチャレンジ精神の旺盛な人…。
 国連の「人間開発報告書」によると、住みたい国のランキングは①ノルウェー②アイスランド③オーストラリア④ルクセンブルク⑤カナダ⑥スウェーデン⑦スイスの順。これは生活の豊かさを比較したもので、必ずしも移住に適した順位ではない。年金生活者にとっては生活費が安く、治安や公共施設も一定水準に達していて気候も穏やかなところが魅力になる。隣近所に引っ越すわけではないから、入念な下調べも必要だ。
 前述のうち、物価がアメリカの約5分の1というフィリピンは、一定の条件下で外国人の移住を歓迎している。また、北マリアナ諸島のサイパン島は、「ロス疑惑」の三浦和義がアメリカの捜査当局によって逮捕されたことでも明らかなように、アメリカの自治領。だから通貨は米ドル。コトバは英語。消費税がないから物価も住宅費も安く済む。かつて日本が統治していた影響で商店、レストランなどでは日本語も結構通じる。医療は、自治領だからメディケアがカバーするので、安心。
 世界有数の美しい海に囲まれた常夏の島。55歳以上ならアメリカ市民でなくともビザなしで長期滞在できる特例もあり、ちょっと覗いてみたくなる衝動に駆られなくもない、彩帆島(サイパントウ)。【石原 嵩】

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