かつて9月15日だった日本の「敬老の日」もいつの間にか9月第3月曜日に変わり、今年は20日。
 毎年この時期、日本では最高齢者紹介や100歳以上の人数発表などがあるが、今年はその数が減ることもあるかも知れない。東京都の高齢者の1人が実は30年以上前に死去していたと分かったことをきっかけに、全国各地で同様な例が次々と報告されているからだ。「葬式代がないから」と死去を隠すのはこれまでにも報道されていたが、最近明るみにでているのは「年金を失いたくない」と家族が死去をひた隠しにしているケース。高齢者の年金収入があてにされていたため、家族が死亡の事実を隠し、書類上で歳を重ねていたという訳だ。
 ところがこれら一連の死亡隠しに関連して、死亡の届出があっても役所の手違いで戸籍へ記載されず戸籍上は140歳以上の人がいることが報道され、私は、ひと昔前に二世の友人が見せてくれた戸籍謄本を思い出した。先祖の墓参りをしようと日本から取り寄せた謄本には、早くにアメリカで死亡した親兄弟の名がまだそのままにあった。誰も死亡を届け出ることのないまま年月が過ぎ、書類上は生き続けていたのだ。
 逆に、記録から消されていて驚くこともある。年金や医療保険など各種の日本の行政サービスは住所の登録(住民登録)に基づいて行われるから、個人の住民票はアメリカのソーシャルセキュリティ番号同様に重要な役割を果たしている。そのため、居住の実体のないことが明らかになれば役所は職権で住民票を抹消出来る。海外転出の届出をしないままロサンゼルスに留学した知人は、アメリカで仕事をする機会を得てそのまま数十年が経過。老境にさしかかり日本に戻ったところ、「所在不明者」として住民票が抹消されていたことを知った。渡航から15年経て消されたらしいが、まるで浦島太郎かホームレスになった感覚を味わったという。
 12日はアメリカのグランドペアレンツデー。9月は、親を思い、自分の行く末をも思う月のようだ。【楠瀬明子】

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