化粧品メーカーの市場開発が段々エスカレート しており、顧客の対象がティーン・エイジャーからメイクアップにはまだ間がありそうなプリ・ティーンにまで及んでいるという。つまり10歳、11歳、12歳辺りを対象にした化粧品がどんどん出回っているそうだ。
マスカラだのアイシャドウ、アイライナー、マニキュアなどが少女好みのパッケージで化粧品売り場に花をさかせているとか。美を追求する女心の萌芽もスピードアップしているようだ。
化粧品会社が、結構な値段の化粧品を購買力の無いプリ・ティーンに買わせるということは取りも直さずその両親の懐を狙っていることになる。まだ幼さの残る子供の化粧を許す、だけでなく化粧品を買い与える親もいれば、学用品や昼食代に事欠く親もいる。世の中複雑です。
それにしてもまだ瑞々しいプリ・ティーンの皮膚に不必要な化粧を施すことでかえって害にならないものだろうか。
「メイクアップをすることで、子供が自分の容姿に自信を持つことができるなら、クラスや友達の間で劣等感から臆病になるより余程よいことだと思いますよ」とはある母親の一理ある意見だが、子供に自信を持たせるためにはメイクアップ以前に必要なものがありそうに思うのだが…。
わが幼少の砌は(?)、高校生でさえ派手な化粧などしようものなら不良呼ばわりされたものだ。
多分私が高校生の頃だった。何かの話から祖母が「心磨け、鏡を磨け、顔磨け。顔は心と鏡が磨けてからだよ。鏡が汚ければ顔がきれいに映らないしね」
特別お説教じみたことは言わなかったが、自分が歳をとるほどに、その言葉が重みを増してくる。
いまさら祖母に文句を言うつもりは無いが、心を磨くのはなんと歳月のかかるものであろう。些細なことで腹を立て、広い視野で物を見ることができない私は、一体いつになったら顔を磨くレベルまで行けるのだろう。
身贔屓を引き算しても、祖母は美しい人だったが私に隔世遺伝は起こらなかった。化粧にはほど遠い顔に、増えてくるのは皺ばかり。【川口加代子】