「天災は忘れた頃にやって来る」どころか、阪神大震災、スマトラ沖地震と大津波、ハリケーン・カトリーナ、中国・四川大地震、ハイチ大地震など巨大被害をもたらした天災はまだまだ私たちの記憶に新しい。「備えあれば憂いなし」が通用しないほどのM9・0を記録した今回の東北地方太平洋沖地震と大津波。それに伴う福島原発事故。
 一夜明けるごとに犠牲者の数が増え、被害の広がりが時間の経過とともに明らかになっている被災地の惨状。引き波に流された人も多く、正確な行方不明者の数さえもつかめていない。今なお、およそ20万人が避難所生活を余儀なくされ、さらに放射能漏れの恐怖が追い討ちをかける。日本の存亡にかかわるほどの緊迫した「深刻な状況」が依然として続く。
 こうした複合災害に苦悩する日本に対して、世界中から支援の手が差し伸べられ、激励のメッセージが寄せられている。同時に、未曾有の災害に対処する日本人の秩序ある行動、冷静で礼儀正しいマナーに称賛の声もあがっている。
 災害に乗じて略奪が行われ無法状態に陥ることが多い中、日本ではそうした現象が見られないのは驚きであり、尊敬に値する国民だと言う。あるスーパーマーケットでは、地震で床に落ちている商品を顧客が棚に戻したり、レジでは1列に並んで順番を待ち、ちゃんとお金を払ってから店を出ていくといった、きわめて当たり前の光景が、外国の人から見ると「驚き」と映るらしい。
 一方で、津波で家が流され、両親も行方不明という心身ともに極限状態の中で復旧作業に携わる原発の従業員がいる。犠牲を払ってでも困難に立ち向かう気概の自衛隊員や消防隊員がいる。困ったときはお互い様と、助け合い、協力し合う避難所の人びとがいる。
 苦境に置かれながら自然と振る舞う日本人の行動様式は、作り物でない本物の品性、品格の表れ。日本が世界に誇っていい資質であり、それは日本の底力だ。災害復旧に10年、20年かかったとしても、必ず完全復興してくれるだろう。【石原 嵩】

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