携帯電話という動かぬ証拠が出てしまった八百長相撲。どう決着をつけるのか、なかなかいい知恵が出ないようだ。
江戸の昔から八百長相撲はあったらしい。「騙されたふりをして歌舞伎のように楽しめばいい」とは、石原慎太郎都知事の弁。
実は、今から9年前、シカゴ大学の経済学者が、計量経済学の経済効率数値を使って、八百長相撲を言い当てていた。S・レベット博士らだ。
「商業活動における不正行為は経済にどんな影響を及ぼすのか。能率を低下させているのになぜ蔓延しているのか」
この命題を解明するための事例を模索しているうちに、日本の大相撲にぶち当たった。
89年1月から2000年1月までの本場所の「関取」(平幕と十両)力士3万人による6万4000の勝負結果を徹底的に検証した。
7勝7敗で千秋楽を迎えた十両力士が、8勝6敗の力士と取り組んだときの勝率は、79・6%。経済効率で弾き出した予想勝率は47%。
同じく7勝7敗の力士が9勝5敗の力士と対戦したときの勝率は、73・4%。予想勝率は48%前後にすぎない。
十両と幕下では給料も待遇も雲泥の差。まさに力士になるか、褌担ぎになるかだ。同僚力士を陥落させたくないという「互助」が働いているからこうした結果が出た、と経済学者はみた。
大相撲は、あくまでもフェアなスポーツマンシップを貫いて近代スポーツの一角に居座ろうとするのか。
あるいは、「義理と人情」を重んずる日本古来の娯楽格闘技の道を歩み続けるのか。
もし前者を選ぶのなら、八百長相撲を生み、それに目をつぶってきた相撲協会の体質、つまり計量経済学用語の「不可算の諸要素」(Nonlinearity)を取り除け、と二人の学者は提言している。
相撲とは全く無縁のアメリカ人経済学者の助言。大相撲をこれからどうするかを論ずる時、「頭の体操」になるかもしれない。【高濱 賛】