福島原発事故により、二酸化炭素を出すこともなく人類に恩恵をもたらす水・風・太陽・潮流などを利用した再生可能エネルギーの開発が一段と脚光を浴び始めた。日本でも非常にユニークな研究が陽の目を見ようとしている。「抵抗はエネルギーになる」と従来の流体応用力学の常識を破った新理論でエネルギー開発を続けるS氏だ。従来、船も自動車も新幹線も抵抗を減らしスピードを上げるために流線型を追い求めてきた。ところが海中では高速で泳ぐのはマグロやカツオ、ヒレが大きいわけでもなくずんぐりむっくりなのに高速で泳ぐ。「抵抗が少ないのが高速の条件なら、鯛やひらめが速く泳げるはず」というのがS氏の口ぐせ、「抵抗はエネルギーになる」とユニークな理論で常識を破る開発を進める。
S氏は自然を見つめることで従来の理論にとらわれる常識を覆してゆく。疑問に思えばやってみて、何百・何千という実験を積み重ねることで新しい法則を見つけ出してゆく。次々と新しいアイディアを生み出す彼の周りには信奉者が集まり、「日本のエジソン」と期待が高まる。風力発電のハネから始まった研究は、あらゆる方向からの風を効率的に取り込む垂直型風力発電や水平型風力発電に結びつき、画期的な効率のスクリューや水力発電用プロペラの開発を生み出した。そしてこの理論は空気を抱き込んで自在に飛び回る飛行艇にまで行き着いた。NHKをはじめ民放テレビ局でも映像が紹介され、その模型は4月から映像と共に神宮外苑の「TEPLA」(機械産業記念事業団)で夢の科学技術として展示紹介されている。
最近の実験で水力発電用プロペラに驚異的な効率が実証された。並列にも縦列にも並べて設置可能だそうで、風力や太陽熱など自然条件に影響されることが少ない水力・潮流発電はさらに大きな可能性を秘めている。これらの効率的なマイクロ発電は、従来の大型発電機と違って小さくて扱いやすく設置可能場所は無限に広がる。電気も地産地消になればインフラ不備の地域に文明やビジネスのチャンスが広がる。日本発の新技術が世界に大きく羽ばたくことを期待したい。【若尾龍彦】