半年経てば古くなるといわれるコンピューターもさることながら、アイフォーンだのスマート・フォーンだのと呼ばれるコンピューターの曾孫のような代物の開発や売り込みが凄まじい。
 結構金額の張るものだが、音楽も聴けるし、小さいながら映画も見ることが出来る。ポケットサイズの通信機に百科事典とエンタテインメント・センターがプラスされた至れり尽くせりのハイテク玩具というところか。
 私のようなローテク人間には使いこなせる日は多分こないだろうに、その利用者の多いこと。知人の2歳半になる息子が親のスマート・フォーンにプログラムされたゲームに熱中して実に静かに遊んでいるから子供向けのゲームかと思えば、先日は電車の中で中年の背広姿の男が猫背になって同じゲームに挑戦していた。子供の知能指数が高いのか、大人が幼稚なのか…猫も杓子も所かまわず、である。
 道を歩きながらEメールを読み、直ちに返信を送り、車に乗ってからもどこの給油所のガソリンが一番安いかを指先で調べる。レストランで食事をしながら、食事の相手を無視してスマート・フォーンに没頭している。ひどいのになると会議の最中でもうつむいて親指をヒョコヒョコさせている。
 小型化されているからどこにでも持っていける便利さから、瞬時も手放せないらしく、電池が切れたり何かの拍子に機能しなくなるとパニック状態になる。まるで幼児のセキュリティー・ブランケットである。
 そこで21世紀版二宮金次郎よろしく、歩きながら親指ヒョコヒョコをやっているからそれを狙って通行人を襲う犯罪が増え…と、ここまで書いて、われながらネガティブなコメントだと気付いた。
 私などは数年前に無理やり持たされたシンプルな携帯電話で交信し、テキストを送り、メッセージを聞くことができるようになった自分の肩をたたいて「よくやった」と褒めてやりたい気持ちだが、まあこのあたりが限度でしょう。
 ハイテクに逆らうつもりはさらさらない。情けないことに、ついてゆけないだけである。【川口加代子】

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