小東京ビレッジプラザには今も七夕の短冊が飾られている。離ればなれになった織姫と彦星が年に1度、天の川に橋が架けられ会うことができる恋物語から、短冊には「素敵なボーイフレンド(ガールフレンド)ができますように」など、恋愛にまつわる願い事を書く人が例年多いのではないだろうか。ただ今年はちょっと違うようだ。
平日のお昼時、ランチを買いに小東京ビレッジまで足を延ばすと、色とりどりの短冊が涼しげに風になびいていた。のぞいてみると、子どもの文字で「日本の人々が元気になれますように」と力いっぱいに書かかれたメッセージがあった。
短冊は英語、日本語、中国語、韓国語などさまざまな言語で書きこまれ、残念ながらハングル文字は読めなかったが、英語、日本語、そして中国語もその漢字から、被災者への励ましのメッセージなのだろうとすぐに推測することができた。
先日、高校生くらいのアメリカ人グループが、初めて訪れたと思われる小東京ビレッジプラザの中を楽しそうにおしゃべりしながら散策していた。すると笹に気付いた一行は、いぶかしそうな面持ちで短冊に書きこまれたメッセージ一つひとつを丁寧に読み始めた。さっきまで賑やかだったグループが静かになり「自分たちも日本へのメッセージを書きたいね」と言いながら、短冊とペンを探しにいっていた。小東京の笹の1本1本には、被災者のことを思う短冊が飾られている。
12日から15日まで、小東京ではLA七夕祭りが開催される。震災で被害が大きかった宮城県のイベントとあるだけに、当初は自粛の声が上がったが「こんな時だからこそ日本にエールを」と実施が決定。宮城県人会の米澤会長も「これは自分に与えられた使命。負けてはいられない」と以前語っておられた。
東北の七夕祭りは壮大で、色とりどりの飾りがロサンゼルスの風に吹かれる光景は美しい。被災地への思いを込めた七夕祭り。今年は好きな人との良縁だけでなく、被災地にも思いを馳せてみてほしい。【吉田純子】