世界的なチェリスト、ヨー・ヨーマ氏ら著名な中国系アメリカ人で構成される「百人委員会」が米軍内部で起こった中国系兵士の自・他殺事件の真相究明に立ち上がった。
 自殺した兵士は、11年10月3日、アフガニスタン駐留中に同僚8人から「苛め」(Hazing)にあい、ノイローゼとなってピストル自殺をしたのだ。
 6カ月前にもアフガン駐留の中国系海兵隊員が同僚3人になぶり殺されている。
 「百人委員会」は、相次ぐ中国系兵士の不慮の事故の背景に組織的な中国人に対する人種差別・虐待があるのではないかとの疑惑の念を抱いている。
 アジア系移民の子供たちの間で、今ひとつのトレンドになっているのが米軍への入隊だ。軍隊に入れば、給料もくれるし、学費も出してくれる。まさに「米軍入隊」は大学進学のための「パスポート」だ。ランド研究所の報告によると、中国系、韓国系の志願兵がここ数年増え続けている、という。
 「苛め」には、Hazingという英語が使われいる。Bullying(暴力を伴ういじめ)とは若干ニュアンスが異なる。「悪ふざけ」「肝試し」「忍耐試し」といった意味のようだ。
 ところが、自殺した兵士に対する「苛め」は度を超していた。言葉による「苛め」は段々「暴力」を伴う行為へとエスカレートしていったらしい。
 なぜ中国系が「いじめ」の標的にされるか。
 知人の米陸軍将校(白人)は、「中国人だったから標的にあったのではない。おそらく、生活習慣の違いとか、身体的に異質なことが原因ではなかったのか」と見る。
 異質なものに対する「苛め」は、どの社会にもある。軍隊もそうなのだろう。だが、こうしたことを取り上げ、加害者に厳罰を処する。それを要求できるのは、多民族多文化国家・アメリカの国民の権利であり、義務である。【高濱 賛】

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