今回も好きな日本語、そうでない日本語についての主観私見の勝手文です。前稿でお母さんなどの「お」と「さん」で挟む語の味わいと温かみが好きと書いたが紙面が無く例を少ししか書かなかった。好きなのでさらに追加すると、お月さん、お嫁さん、お婿さん、お向かいさん、お姉さん、おばあさん、お雛さんなどたくさんありますよね。おのぼりさん、ですら若干の揶揄感はあるが田舎者などという見下した表現と違い温かみと優しさが感じられる。
 ところでこの「さん」は物でも人の姓、名、どれでも自由に付けて使える語で、男女の別なく使える。こういう語は英語、仏語、スペイン語などの欧米語や漢語にはなく日本語の優れた語の一つだ。
 日本は世界が認める世界七大文明の一つ。(日本人が言っている訳ではない)その中で日本だけが一国一文明という稀な国。他の六文明にはみな複数の国や地域が所属。ここでいう文明とは文化と文明を併せた概念。その日本文明の中核が日本語です。世界の他の主要な言語を見ると、大航海時代以来の植民地主義の歴史の産物でもあるが英語、スペイン語、アラビア語、トルコ語などは多数の国や地域の国語や標準語になった。仏、独、蘭、露、中、ポルトガル語なども幾つもの国、地域の国語や標準語だ。しかし日本語は日本国だけの言語。多くの日本人はその日本語を解し、使い味わえる能力と幸運を持つ。同時にどの世代の日本人も野球の中継ぎ投手のように日本語を次の世代に「きれいに」継承していく役目を持っていると思う。また世界にもこの奥深い文化を大いに広めたいものだ。
 さて、大震災以来日本でスポーツ選手や芸能人が「私の活動で被災地の人たちに勇気を与えたい」などと言うのをよく見聞きする。悪気はないのだろうが被災者の人々に一人称で「与える」という言い方は感心しないし止めたほうがいい。「殿が家臣に俸禄を与える」「犬に餌を与える」など多く与えるは上からの語感。元気を届けたい、勇気を感じてほしい、励ましを受けとってくださいなど幾らでも言い方がある。「作品が読者に感銘を与えた」のような二、三人称は良いが。スポーツ団体や芸能会社は思いやる謙虚な心の日本語を指導すべきですね。【半田俊夫】

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