佐賀県海外使節団の一行と南加佐賀県人会の中西会長(左から3人目)、プログラムの企画運営を担当した小川将明さん(右端)  
 南加佐賀県人会(中西和彦会長)が主催し、佐賀県出身の大学生がカリフォルニア州で起業家精神を学ぶ研修プログラム「佐賀県海外使節団」の一行が5日から加州を訪れ、北加、南加地区のさまざまな業界で活躍するパイオニアたちと面会。2週間のプログラムを終え、帰国した。
 同プログラムは、佐賀県が幕末維新期に「遣米・遣欧使節団」として若者を世界に送り出し、明治期の日本をリードする人材を多数輩出した時代背景を再現。佐賀県庁が昨年主催し費用全額負担のもと、20人の若者が加州を訪れた。
 その精神を受け継ぎ、今年度から同県人会が主体となり、佐賀県に所縁のある大学生を加州に招待するプログラムを開始。記念すべき第1回目は一部個人負担があるにも関わらず40人が応募し、厳しい審査の末選ばれた9人がカリフォルニアの地を踏んだ。
 希望をもとに、シリコンバレーなどの企業や、NPO団体、医療・教育機関を訪問し、当地で活躍する起業家や研究者などと会い、そのフロンティアスピリットを学んだ。異なる世界を見ることで、視野を広めてもらいたいとの主催者の思いから、訪問先の業種はさまざまだ。
 参加者の瀬古智美さん(中央大学法学部政治学科)の将来の夢は、地方紙の新聞記者になること。訪問先では自分が記者になったつもりで、「伝えるべきことは何か」を念頭におき、質問をした。
 もっとも印象に残った人物は、シリコンバレーに日本企業が進出する際の支援団体JTPAの代表・廣島直己さん。「これからの日本をどうしたら良くしていけるか」との質問に対し返ってきた答えは「そもそもなぜ日本に固着する必要があるのか」。「ただ生まれた国だから良くしていきたいのか」逆に考えさせられたという。世界規模で物事を見る視点を教えられた。
 形成外科医になることが夢の佐賀大学医学部の草場香那さんは、医療現場以外の世界を見て教養を深めたいとの思いから参加した。医師は企業と共同研究する機会もあり、企業の立ち上げや、製品開発の経緯なども知っておきたかったという。
 もっとも印象に残ったのはビジネスコンサルタントの青木義男さんのポイントを絞った話し方。「人生は自分で決定するもの」という言葉に胸を打たれた。
 2人が研修中に感じたことは、日本では失敗は許されないが、アメリカには「失敗しても次に生かせばいい」という理念と、頑張る人をサポートしてくれる環境があるということ。
 そして第一線で活躍する人に共通するのは、「みなバイタリティーに富み、自分の『夢』を大切にし、専門分野以外の知識も豊富」だということ。世界一の蘭生産者アンディ松井さんからは「幾多の困難、挫折を経験しても、それをどう乗り越えたかでその人の人生が変わる」との話を聞き、挑戦を惜しまない生き方に感動し、「何世代も年上の人から逆にたくさんの元気をもらった」と研修を振り返った。
 プログラムを終えて、これからは「積極的に行動し、研修で得たつながりを大切にし、将来に生かしていきたい」。そう語る彼らの目には未来への希望が輝き、幕末維新期に大志を抱き海を渡った若者の勇姿と重なった。【吉田純子、写真も】

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