死者、行方不明者1万9000人を出し、甚大な被害をもたらした東日本大震災発生から1年を迎え、ロサンゼルスのアントニオ・ビヤライゴーサ市長と米日カウンシル(アイリーン・ヒラノ・イノウエ代表)は13日、長期にわたる復興へ向けた次なる支援活動などについて協議するサミットを、全米日系人博物館で催した。同サミットは、震災発生直後の昨年3月29日に続き、今回で2回目となる。
【中村良子、写真も】
サミットには、新美潤・在ロサンゼルス総領事をはじめ、ロサンゼルス市危機管理局や日本基盤の国際NGO、あしなが育英会の津波遺児、KIP知日派国際人育成プログラムの学生らが出席したほか、東北地方を代表し、南加宮城県人会の米澤義人会長や南カリフォルニアの支援団体多数が参加。1年が経過した被災地の現状を理解するとともに、長期にわたる復興支援の必要性を再確認した。
ビヤライゴーサ市長は、昨年仙台市を訪れた時を振り返り、「日本人の立ち直ろうとする力、精神力、不屈の精神に感銘を受けた」と述べ、これらは米国人が学ぶべきものだと話した。また、東日本大震災は米同時多発テロと同様に、世界の人々の記憶に残る大惨事であったといい、1年前に約束した日本の復興へ向けた長期支援を再度確約。「日本はアメリカの大切なパートナーであり、今後もその友情関係を強く保ちたい」とエールを送った。
市長とともに仙台市を訪れたロサンゼルス市危機管理局のジェームス・フェザーストーン局長は、訪日の4週間前に訪れたニューオーリンズと仙台を比較し、「日本の復興力の早さにたいへん驚かされた」と述べ、これも日本政府と国民一人ひとりの危機管理に対する認識の高さの表れだとし、南加をはじめ米国は見習う部分が多いとした。
新美総領事は、日本政府を代表し被災地の現状を説明。散乱した膨大ながれきの96%はすでに一時保管場所に集められ、5万軒以上の仮設住宅が建設されたが、がれきの最終処理問題や被災者の雇用問題、観光業の落ち込み、また福島原発問題など、まだまだ問題は山積みであると報告。しかし、「東北は必ず復興する」と力強く訴え、「困ったときの友こそ真の友」とことわざを用いて、米国をはじめ世界各国からの支援に感謝の気持ちを伝えた。
宮城県石巻市で復興支援を続けている特定非営利活動法人JENの平野敏夫・海外事業部次長は、広範囲にわたり被害を受けたことにより、多くの住民が引っ越しを余儀なくされ、コミュニティーが崩壊していると報告。コミュニティーの復元には非常に時間がかかるが、現地に残った地元民と協力しながら少しずつ将来の具体的なビジョンを構築しているといい、あらためて長期的な協力を要請した。
「僕たちのこと、忘れないで」
津波遺児2人が支援訴え
今回の震災で、親を失った遺児は2000人に上る。この日のサミットには、津波で父親を亡くした宮城県の佐藤大地さんと内村希さんがあしなが育英会の津波遺児プログラムを通じ参加した。
2週間前に高校を卒業したばかりの佐藤さんは、母親に経済的負担をかけたくないと、一時は大学進学を諦めた。しかしあしなが育英会から奨学金を得ることができ、海難救助隊員になるべく猛勉強をし、海上保安学校へ合格した。佐藤さんは、「津波で亡くなった父も、海から人を救助する息子の姿を見たら、きっと喜んでくれると思う」と話すとともに、被災地ではまだ多くの人が困難な生活を強いられていると強調。「僕たちのことを忘れないでほしい」と、切実に訴えた。
内村さんは、震災後、行方不明になった父親を母と姉と3人で探し続け、3週間後に父の遺体を発見した時には声をあげて泣いた。「あれから1年が過ぎたけれど、私は父のことを決して忘れていない。今でも、父の姿が目に浮かぶ」と話し、自身と同じように親を失った子供たちが多くいることを知り、保育士になることを決意。あしなが育英会の奨学金を得て希望の学校に合格、「新たな人生を歩みます」と力強く語った。
自身にも同年代の子供が2人いるというビヤライゴーサ市長は、「君たちが経験した辛さは想像もつかないが、その勇気を心から称えたい」と、感謝の言葉を述べた。
2人は、あしなが育英会の震災遺児心のケア施設「東北レインボーハウス」の建設資金捻出のため、今週末に催されるロサンゼルスマラソンで募金活動を行うほか、佐藤さんはじめ東北4県で被災した学生14人が17、18日の5Kやマラソンに出場する。
米日カウンシル:「トモダチ世代」育成へ
官民協力事業で長期支援
米日カウンシルは、震災直後から東北支援に乗り出した。義援金集めのためのウェブサイトには、開始24時間で35万ドルが集まり、昨年末までに全米から約260万ドルの寄付が寄せられた。これらはすべて、日本のNPOやNGOを通じ、東北地方の復興支援に役立てられる。
ヒラノ・イノウエ代表は、米国政府と米日カウンシルが日本の復興を目的として立ち上げた官民パートナーシップ事業「トモダチ・イニシアティブ」をあらためて紹介。日米の将来の世代「トモダチ世代」の育成を目指し、日本政府をはじめ、関心のある企業や団体、地域社会、個人の協力のもと、異文化交流や日米間の文化的理解と体験の推進、学術、語学、スポーツプログラムへの支援、起業家や将来の指導者育成など、長期的な支援に取り組んでいく。