盛況のうちに幕を閉じたロンドン・オリンピック。本命の選手が怪我で棄権、無名の選手による番狂わせ…まさにドラマがあった。金メダル数は予想より少なかったが、日本の活躍は感動をもたらした。総メダル数では歴代新記録だ。
ところでトーナメント競技では、メダル獲得までの組み合わせが大いに影響する。いきなり優勝候補の相手と当たるのは悲運だ。そんな中、再度チャンスを与えよう! との敗者復活戦の仕組みに興味を持ち、調べた。
古くから存在し、幾度もルールが改正された。競技によって違う。レスリングはダブルレペチャージ方式だ。予選一回戦で負けても、その勝った相手が準決勝に進出すれば敗者復活戦の権利が取得できる。つまり自分を負かした選手を応援する面白さがある。
今回の柔道は、準々決勝(ベスト8)まで勝ち残った選手のみ資格を与えた。それぞれ別のブロックから決勝まで勝ち抜いてきた2人の選手は、当然、金と銀を争う。そして残り6人の選手で2つの銅メダルを争う。準決勝で負けた2名の選手はそれぞれの3位決定戦(銅メダル)のブロックに進む。準々決勝で負けた4名は、まず同じブロックの負けた者同士で敗者復活戦の1回戦。勝った方が別ブロックで準決勝で負けた選手と3位決定戦(銅メダル)を行う。一度戦った相手と2度はあたらないようにだ。
真に実力を競うなら総当たり戦がベストだが、試合数が増え時間がかかる。昔は敗者復活戦から金メダルのチャンスもあった。64年の東京オリンピックでアントン・ヘーシンクと決勝で戦った神永選手だ。2日前の2回戦でヘーシンクに破れていた。結局、怪我をおして戦ったが、再度負けて惜しくも銀メダルだった。
敗者復活システムは、どちらかというと一度不運にも負けた実力者に再度チャンスを的な感じもする。最も悲運なのは、準決勝(ベスト4)まで残っても、結果的にメダルを取れなかった選手だろう。記録上5位になる。そして本戦で自分が一度負かした選手が敗者復活戦で勝ち抜いて銅メダルを取ってしまう可能性がありうるのだ。フェアと言えるのか? 勝負の世界は厳しい。【長土居政史】